第六話
(さぁーーて…どうすっかな)
京はスライムを観察する。見たこともない生物だ、簡単には攻め込めない。大きさは京の膝元ぐらい、動きはすっとろい。ぴょんぴょん跳ねてこちらに向かって来る。
(これ触ってもいいのか…?ええ、でもなんか汚ねぇな)
距離がかなり縮まった。この距離なら蹴りが入る。
「フッ!!」
まずはローキックで様子見だ。しかし…当たってはいるがスライムの体は潰れて、まるでダメージがない。
「うわっ!きったねぇ!!」
足がなんだかベトベトしている。飛び散った破片がまた一つになり、スライムは元通りになってしまった。
(なんだこれ…効いてねぇ)
京は思いっきりジャンプし、渾身の踵落としを叩き込む。しかし、べちゃりと飛び散った後にまた元に戻る。
「うわわ!飛び散って汚ねぇ!」
スライムもただ攻撃されるだけでは終わらないらしい。体の一部を京にめがけて飛ばしてきた!
「うおぉっ!」
間一髪避ける。続けて二発目、三発目が飛んでくる。
二発目はかわせたが、三発目はかわせなかった。京の腹に一発、スライムの破片は命中した。
「ぐえあっ!」
思ったより重い…少しのけぞってしまったが、すぐに体勢を立て直す。
(オイオイ…そこまで強くもねぇけど、倒せねぇぞ!)
すると、今まで黙っていたイナが歩いてきた。スライムがイナの方に向かっていく。
(アイツ…どうするつもりだ?)
イナは近くにあった棒を拾うと、スライムめがけて振り下ろした。
ベチン!と音がした。スライムは飛び散っていない。
「なっ!なんで飛び散らねえんだ…?」
「さっき私は、木の枝に魔力を纏わせてスライムを叩きました。魔力を纏わせれば、スライムに確実に攻撃を与えることが出来ます」
つまりは…それを応用すれば、拳や足に魔力を纏わせ、スライムを倒すことが出来るのだ。
「なるほどな…!つまり拳に魔力を乗せろってこった!」
イナはにやりと笑って見せた。流石魔法使いだ。
(でも…拳に魔力をって言ってもなぁ…石も光らなかったし、どうしたモンかなあ)
京は言われた通り、体内に魔力が流れているイメージをする。しかし、それに夢中になってしまい、飛んできたスライムの破片をモロに受けてしまった。
「ぐっは!!」
顔面に入ってしまった。ネバネバしててすごく汚い。
「ペッペ!あぁきったねぇな!それに痛えんだよ!クソっ!頭来たぜ!」
京は勢いに任せ、サッカーボールを蹴るようにしてスライムを蹴った。しかしダメージはなさそうだ。
魔力を…魔力を!拳を強く握り、魔力が流れるイメージをする。そして、スライムが元の形に戻るタイミングで、思いっきり拳を叩きつけた。
手応え、アリだ。ベチンと音がして、スライムが動かなくなったかと思うと、蒸発するかのように消えてしまった。
「これは…やったのか?!やったぜぇ!」
魔力を少しコントロール出来るようになったのだ。これで京は、少しではあるが魔力を出せるようになった。
「おめでとうございます」
イナが言った。想定内、といった顔だった。京は、なぜ彼女がここまで自分の世話をしてくれるのか、ふと疑問に思った。
「なぁ、そういやイナってさ、なんで…」
「さぁ、さっきので少しは魔力の使い方が分かったでしょう。今日はもう何種類かのモンスターと戦ってもらいますよ。」
「ええっ?!何種類かって…スライムじゃないやつもいるのか?」
「はい。ですが…貴方の身のこなしを見ていると、他のモンスターにはそこまで手こずらないと思いますよ。」
「へぇ…ならイイんだけどよ」
「試験まであまり日がありませんからね。今は実戦あるのみです」