第五十九話
京はあと一週間で死ぬ。あれから先生にどうすればいいか聞いてみたが、すべて、「分からない」としか言われなかった。ここまで侵食されるのは闇の主封印後では珍しいらしく、どうすればいいか分からないらしい。とりあえず京は病院を出て、イナ…イアスの元へ向かった。
「貴方、どこかで闇の力に触れましたか?」
「いやいや…そんな覚えは…いやあるわ!!」
アストレア王国で会った『クスィー』。こいつは治療した時に少し「闇の魔力」を混ぜておいたと言っていた。
「…貴方は魔力量が少なすぎました。そのせいで、少量の闇の魔力でもここまで侵食が進んでしまったのでしょう」
「なぁイナ、オレあと一週間で死ぬらしいんだよ。先生に聞いてもどうすりゃいいか分かんねぇって…イナ、なんか方法はねぇのか…?」
「…」
イナは眉間にシワを寄せ、うーーんと言いながら机を見つめている。こんな場面でも、事態の深刻さを実感して焦ってしまう。
「…一つだけ方法があります。」
京が助かる方法はあるらしい。が、イナの表情はあまり芳しくない。
「あんまいい方法って訳でもなさそうだな」
「私の『光の力』を貴方に渡すことです。」
「はぁ…?でもそれって美月に渡すんだろ?それに…お前が死んじまうんじゃなぁ…」
「私は力を譲渡するのは美月さんでも、貴方でも良いと思っています。人間としてはね。しかし貴方の魔力量では、この強大な魔力量に耐えられないかもしれません」
「…じゃあオレはこの辺で死んどくぜ。美月なら確実に継承出来るし、アイツの方がその力を使いこなせるだろ。オレが持ってても意味ねーしな」
京はあの戦いを見て。美月との力の差を痛感していた。力も魔力も、全てにおいて格上だ。
「…それはダメです」
イナが京の元へ近づくと、京の手を握る。
「貴方のこのボロボロの手…これは美月さんには無かったものです。そして、世界を救う英雄にはあるものです。」
「…」
「それに…貴方はこの世界を変えられる気がします。かつて世界に光をもたらした者のカンです。」
イナは微笑んでみせる。
(クソ…こいつには敵わねえな…)
「…ちょっと、時間くれ…。考える…」
イナの家を出ると、時刻は夕方になっていた。京は自分の手を見る。ここに来る前は、流派を継ぐ天才としてもてはやされてきた。誰にも見られないところで一人で鍛錬していた。
「アイツだけだよ…オレが努力してるって気付いたの」
京はため息をつくと、駆け足で寮へと帰っていった。




