第五十八話
「死ぬ…?!なんでだよ!」
数分間の静寂の後、京がイアスに問う。
「力の譲渡はかなり大掛かりなものです…恐らくもう、私の体は耐えきれず、魔力の器が崩壊して死ぬでしょう」
美月も京も、困惑を隠しきれない。イアスがまた口を開く。
「とにかく…もう少ししたら譲渡を行います。嫌だというなら…構いませんが…?」
この感じ…怒らないから正直に言いなさい、と言う教師と同じだ。
「…分かった、準備しておくよ。」
次の日。京が学校に向かうと、アイリスに声をかけられた。
「ねぇ、キョウ…今時間あるかい?」
「あ?あぁ…あるけど」
二人は少し離れた普段は誰もいない教室に向かった。
「ねぇ、この前のこと…まだ怒ってるのかい?そろそろ機嫌直してくれたっていいじゃないか」
昨日の衝撃的な出来事のせいで、正直そんな事は忘れていた。だが…気持ちは前よりも暗い。
「いや…別に怒ってないぜ。機嫌だってサイコーにいい」
「…元気なさそうなんだけど。」
「元気だって…ほら、教室もどろーぜ。朝礼始まっちまうだろ。オレ次遅れたらやべーんだよ」
二人は教室に戻り、また普段通りの生活が始まった。
今日は水属性の中級魔法を扱うようだ。説明を聞き終わり、普段通りに出ない魔法を出そうとした…時だった。
「うぐっ…?!」
突然心臓に刺すような痛みが出てくる。痛みのあまりうずくまると、口からは血を吐いてしまった。
「なんだ、コレ…?!」
隣にいたアイリスが心配して駆け寄ってくる。
「ちょっと!!大丈夫かい?!」
だんだん意識が薄れていく。痛みの中で、京の意識は深い闇の底に沈んでいった…。
真っ暗な中から、声が聞こえる。ぼんやりとしていて聞き取れないが、どこか寂しそうな声。耳をすましてよく聞くと、なんと言っているかが分かった。
「お前とは…もっと別の出会い方をしたかった…」
浮かび上がる二つのシルエット。一人の男と、髪の長い女。近づこうとした時…目が覚めた。
「気が付いたかね…」
ここは病院のようだ。外は既に暗くなっている。
「オレ…なんでこんなとこにいんだ?」
「率直に言おう。君の魔力は闇の力に侵されている。これまで元気に学校に通っていたのが信じられないくらいにね。」
この医者っぽい男の表情を見るに、時代はかなり深刻なようだ。
「はぁ…で?それはやばいのか?」
「私たちでは手の施しようがない…このままでは君は、あと一週間で死ぬだろう…。」
唐突な余命宣告。京はあと一週間で死ぬ。
「…は?」




