第五十六話
「…なるほどね。僕の力試しってことかな。」
「…そんなところですね。」
イナと美月は立ち上がり、外へ出て行った。京もその後をついて行く。いつも京とイナが特訓をしている草原まで歩いた。
「…ここなら周りに民家もありませんし、お互い全力で戦えますね。」
「…でも、貴女の魔力量じゃあまりいい勝負は出来ないんじゃないかな?」
(は…?!イナの魔力は一万…とんでもない魔力のハズだぞ?!それでもいい勝負ができない…?)
京が驚いていると、イナは不敵な笑みを浮かべる。
「…これは『開放前』の魔力量です。貴方でもそこまでは見透かせなかったようですね。」
余裕そうだった美月の表情に、少し焦りが見えた。
「…なるほど…。イナさん…貴女は何者なんだ?」
美月の周り柱が二本現れ浮かんでいる。美月の周りからは大地を揺らすほどのエネルギーが放たれる。
「ふふ…そう来なくては。」
イナが右手を上げると、光がイナを包み込んだかと思うと、巨大な斧がイナの手元にあった。イナの体では持ち上げられるはずがない、と思うようなサイズ感の戦斧を軽々と片手で持っている。
(スゲェ…この二人、ハンパじゃねぇ…!!)
イナが光を放ったかと思うと、次の瞬間には美月に斬りかかっていた。美月は斧をかわすと、柱から無数の魔力弾を放つ。すべての弾をよけたイナは、空に手を掲げる。すると、巨大な隕石が美月めがけて降りかかる。唸るような音を立て、地面を抉りながら美月を押し潰す。これではひとたまりもないかと思われたが、爆発と共に美月がイナに接近する。柱から一本の剣を取り出すと、イナめがけて振り下ろす。戦斧と剣での一進一退の攻防が繰り広げられる。その姿は、さながら神話に登場する戦士だった。
(格が違う…コイツらはハッキリ言って、最強だ…)
京の体が震える。二人が一度激突する度に、地面が揺れる。吹き飛ばされそうな風が巻き起こる。この戦いに巻き込まれれば、京では死んでしまうだろう。
「くっ!」
美月の剣が砕け、イナから距離を取るが、すかさずイナは美月に接近する。戦斧が振り下ろされると、美月は巨大な盾を生成しガードする。しかしその刃の前に盾は砕け散り、盾ごと美月を叩き斬った。
(マジか…!死ぬぞ!)
しかし、イナがバックステップで後ろに下がる。よく見ると、腕からかなりの量の血が出ている。
「…『完全防御』。防御ごと叩き斬れると思ったのですがね…」
「くっ…正直今のはまぐれだ。次あんなの食らったら死んじゃうよ。」
美月も頭部と腕から血が垂れている。しかし、二人とも傷が即座に完治し、また武器を構える。
「…次は確実に…」




