第五十四話
目が覚めと、保健室のベッドに寝ていた。横を見ると、ベッドの横の椅子に美月が座っている。
「目が覚めたかい?」
「うぐ…クソっ!!」
京はすぐさま起き上がろうとするが、うまく体が動かない。
「すまない…魔法を強くかけ過ぎちゃったみたいだね。まだ動かない方がいいかも」
京は圧倒的な大差で敗北してしまい、すぐにでも美月に飛びかかりたかったが…。美月の態度があまりにも穏やかなので、そんな戦意も喪失してしまった。
「…お前、マジで何者だ?」
「僕はただの転移者だよ。君と同じ、ね。ただ少し、魔力は高いみたいみたいだけどね。」
(なんだコイツ…!しれっと魔力量の自慢か?!)
「…僕はね、元の世界で死んだんだ。いや、殺された。」
美月は自身の過去を語り始めた。
「僕が通ってた高校にね、強盗が入ってきたんだ…」
「は?」
そんな中学生の授業中の妄想みたいな展開が実在するのか。美月は話を続ける。
「そこで刃物を持った強盗犯に刺されて死んだんだ。クラスメイトの女子を守る為にね。はは、ダサいよな…」
(別にオメェの話を聞きたいなんて言ってねぇぞ…いや、何者だって言ったか…。)
「…そんな中学生の妄想みてぇなストーリーがあっかよ」
「あるんだよなぁ、ハハハ。」
美月はそうしてこの世界に来たらしい。この時点で京は思った…。
(なんかコイツ…主人公みたいじゃね?)
とりあえず…イナに会わせてみようか。イナの話では、コイツがいればこの世界が平和になるのだから。
「そういえばもう授業は終わっちゃったよ。これから帰るとこだけど…京君は寮で住んでるのかい?」
「オウ…オメェもあの寮なんだろ?」
「そうそう、あのおっきな寮!一緒に帰らないかい?」
「いや…その前に美月、オレについて来てくれ」
夕暮れ、世界がオレンジ色に染まる時間帯に、京は美月を連れてイナの家の前に来た。
「…ここは?」
「まあ待ってろよ。」
扉を3回ノックすると、ドン、ドンと少し足音が聞こえてくる。
「はーい…て、京さんじゃないですか。そちらの方は?」
「あ…こんばんはお姉さん。美月 涼って言います。」
(お姉さん…?なんだコイツ、ナンパか?)
京が美月を睨む。
「ほう…転移者ですか?言葉は…」
「大丈夫、分かりますよ。」
「ほう…?まあいいです。どうされたんですか?」
京が美月のほうを指差して言う。
「イナがこの前言ってた『黄金の門より訪れし者』…てのはコイツのことだぜ。」
「…へ?」
イナは固まっている。数秒、無言の時間が流れる。
「…確かに、相当な魔力量ですね。言語もこちらのものに適応していますね…。とにかく、入ってください。」
三人は、家の中へと入っていった。




