第四十九話
京は今、中庭で一人、飯を食っている。なんだか劣等感に押しつぶされそうだったので、アイリスには用事があると言って逃げてきたのだ。
「クソ…絶対に…この学園で一番になってやる…!!」
そう呟いた時…京はふと思った。別に魔法で一番にならなくても良くないか?オレはこの学園でなら一番素手の勝負は強い。相手が魔法を撃ってきても正直避けられる。そう…手から火が出るだけでも十二分に凄いのだ。別にその気になれば、あのアズールのクソジジイも、アイリスも、学園長もとい国王も…余裕でぶっ殺せる!!
「ふっふふ…ハハハ…」
笑いが込み上げてくる。ダメだ、笑うな…
「アーッハッハッハ!!ハーハハハハァーー!!」
馬鹿馬鹿しい。なにを悩んでいたんだオレは。霧が晴れ、青空が見えた様な、そんな爽やかな気分。もう負ける気がしなかった。
「それでは、今回は試合形式で実技を行う。」
防衛術の授業で、これまでは身を守る「盾」の訓練を行っていたが、今回は試合形式らしい。
「では…キョウくんと…うーん、アイリスさん、二人が試合をしなさい。」
「は?!マジかよ…!」
「入学試験の第二位と第一位の試合だ、しっかり見ておく様に…。」
ちなみに京は一度も「盾」を使えたことはない。
「はぁ…?じっ、上等じゃねぇか…!」
前に出て、アイリスと対峙する。
「手加減はしないほうがいいだろう?君、怒るから。クラスメイトの前で悪いけど、今回は勝たせてもらうよ!」
京は構える。これはチャンスなのだ。魔力がなくても自分は強いと皆に知らしめるチャンスなのだから。
「いけーアイリスさん!やっちまえ!」
「うわー…アイツ死ぬかもな!」
クラスメイトの声が聞こえる。京が勝つなどとは微塵も考えていないようだ。当然だろう。
「…アイリスよぉ、オメェなに最初から勝った気になってんだ?」
京は『エクスカリ棒』を取り出す。これは試合ではない、これからを賭けた勝負なのだ。
「試合…開始!」
試合開始の合図の瞬間に、アイリスめがけて走る。そして頭めがけて『エクスカリ棒』を振り下ろす。
「フン!」
アイリスは『盾』で容易く防ぐと、魔力を固めた弾を京に数発放つ。京も攻撃を交わすと、距離を取り、『エクスカリ棒』をアイリス目掛けて投げた。アイリスは避けるが、次の瞬間には京は目の前まで接近していた。
「っラァ!」
下から潜り込み、顎目掛けて拳を放つ。直撃したかと思ったが…手応えが鈍い。
「ッ…!マジかよ…」
『オートガード』…常に体に防御魔法を貼っておく、高難度の魔法だった。
「マジかよ…!」「あんな魔法使えるなんて…!」
クラスメイトだけでなく、先生も驚いていた。
『オートガード』は、数十年間の修行でやっと身につけられるような魔法だ。それだけあって、微塵も隙などない。物理攻撃しか出来ない京なら、なおさら…。
「そんなものかい?京…!」
アイリスは余裕の笑みを浮かべる。これは…ピンチかもしれない。




