第四十七話
「…来たか。」
ウォンとは、まあまあな数の修羅場を潜り抜けてきた。リザードマンの巣に乗り込んだ時も、『闇の主』の手下であるクスィーと戦った時も…この前もウォンが助けてくれなければかなり危なかった。京とウォンは、友達…いや、もしかするとそれ以上の存在となったのかもしれない。そんな二人が今度行うミッション…それは、一風変わって猫の捜索だ。
「ていうかよぉ…こんな暗い時に探しても見つけにくくねぇか?明かりはあるっちゃあるけどよ…」
今日はあまり雲もなく、月明かりだけでもかなり明るい夜だが…猫を探すとなるとかなり暗い。
「最近心配で中々寝付けんのだ。出来れば今すぐにでも探し出したい。」
可愛い奴め。手には鈴とまたたび。なんとしてでも今夜中に猫を見つけ出したいという気持ちが伝わってきて、京のやる気は高まった。
「よし…じゃあ二手に分かれて捜索開始だ!」
二人は寮の中にある庭園から寮の中、さらには寮の敷地外も入念に探した。木の下を覗いてみたり、草むらの中に入ってにゃんたろうの名前を呼んだりした。しかし…中々見つからない。そうこうしているうちに、寮の門限が近くなってきた。
「オイオイ…ほんとに見つからねぇぞ!どうすんだよウォン!」
京とウォンは合流し、次の作戦会議を行った。二人とも服に葉っぱや土をたくさんつけている。
「チィ…どうすれば良いんだ…!にゃんごろう…!どこにいるんだ…」
ウォンがしゃがみ込む。ここまで弱気なウォンは初めて見た…。普段とのギャップが激しくて風邪を引いてしまいそうだ…。
「ううっ…にゃんごろうー!!にゃんごろうー!!」
ウォンがにゃんごろうの名前を叫ぶ。ウォンの悲痛な叫びは、満月の空に響き渡った…。
…ニャン…。
猫の、鳴き声が聞こえた…。京とウォンは勢いよく振り返ると、一匹の茶色い猫がいた。
「…おっ、お前は…」
驚かせない様にゆっくりと近づくと、その猫はにゃんごろうで間違いないようだ…。
「おぉぉ!にゃんごろう…!!にゃんごろう!!」
ウォンは泣きながらにゃんごろうを抱きしめる。心なしかにゃんごろうが困った顔をしているが、ウォンがとても嬉しそうなので良いことにした。京がほっとひと息ついていると、ウォンがにゃんごろうを抱きかかえて京の元に歩いてきた。
「お前も撫でてやれ。」
ウォンはとても優しい目をしていた。普段とはまるで別人だ。京がにゃんごろうを撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らして甘えてきた。
「よく鳴くうえに撫でるとゴロゴロと言うからにゃんごろうという名前にしたのだ。」
「へぇ…可愛いじゃねぇか!」
ゴーン、と鐘の音が鳴る。
「さ、ウォン。そろそろ戻ろうぜ。あと…」
京は学ランのボタンを一つ取ると、持っていたヒモに通してにゃんごろうの首にかけてやった。
「もう見失わないようにしろよ」
ウォンは少し驚いた様な顔をした。が、なんだか嬉しそうだった。
「…あぁ。」
涼しい夜風が頬を撫でる。涼しく、温かい夜だった。




