第四十五話
京はにやりと笑うと指を鳴らしながらグルードを見つめる。
(ボスってだけあって他のやつとは違うな…冷静だ。それに体格差も結構あるな…さて、どう攻める…?)
武器は…持っていない。素手で戦うようだ。京はグルードとの距離を詰め、ローキックを二発。手応えがあまりない…。グルードはというと、やたらと京を掴もうとする動きが多い。掴まれるとヤバい、と直感で感じた。動きはさほど素早くないが、かなり打たれ強い。数発殴っても効いている素振りは見せなかった。
(ちっ…ジリ貧だな。さっさと終わらせてやる…!)
一気に懐に飛び込み、グルードの服の襟元を掴む。
(このまま首から投げ落とす…ッッ!)
背負い投げ…しかし、身長差があり、なによりも懐が広すぎる。空間が広かったせいで、投げは決まらなかった。
「殺してやるぜぇ…!」
グルードは京の首を掴み持ち上げる。
「うぐぐっ…!」
グルードは勝ちを確信したように笑みを浮かべる。
「オレに掴まれて無事に帰れた奴はいねぇ…このまま締め殺した後に女はいただくとするかなぁ」
凄まじい握力だ…手でこじ開けようとするがピクリとも動かない。しかし…この世界には魔法が存在する。
「…?!」
京がグルードの顔の前に手を向け、唯一使える魔法を放つ。
「メ…ラッッ!」
火球はグルードの顔面で爆発し、掴んでいた手は離れた。顔を押さえて呻き声をあげながらうずくまっている。
「ぐあぁぁあッッ…!!テメェぇええァァ!!」
顔を押さえながらこちらに向かってくる。そして、前蹴りを繰り出してきた。京はすんなりと避け、もう片方の足の膝側部を思いっきり蹴り抜いた。体重がかかり、グルードの膝は本来曲がってはいけない方向に曲がってしまった…。
「ぐあァァァァあっ!!」
グルードの悲鳴が響き渡る。最後に顔面を思い切り蹴り上ると、悲鳴も聞こえなくなった…。
グルードを黙らせると、京は女の元へ向かった。
「おい女…さっきはありがとな。お陰でこんだけ元気になったぜ」
にっと笑ってみせたが、女は怯えている。京は人間と仲良くしたがる哀れなモンスターのような気持ちになった。
「…とにかく、こっから出ようぜ。もう鼻やばいんだよ」
女の手を取ろうとするが、ヒッ、と避けられてしまった。面倒くさくなってしまい、女を無理やりおぶって外へ出た。
「よぉーし…じゃあな。もう誘拐されんなよ」
外に出て、今度こそ帰ろうとしたその時。
「わ…私!ミヤっていいます…!」
女は京に、名前を教えてくれた。
「…おう、またな。」
そう言い残して、カッコよく去ろうとしたが…ゴーン、と鐘の音が響く。
「えっ…やべぇ!!門限がっが!」
焦り散らかして走り出す京の姿を、ミヤはゴミを見る様な目で見つめていた…。




