第四十四話
「つぅーかここくっせぇんだよ!ハウスダストえぐいし…ちょっと鼻詰まってきたじゃねーかバカ!!」
アジト内部にはとんでもない臭気が充満していた。ろくに掃除もしないうえに風通しは最悪なので、生活環境はドブネズミと同等だろう。まあまあ広いのはいいかもしれないが。
「なんだオメェ…!それにどうしてここが…!」
京はにやりと笑い、手に持っていたものを前に出した。
「うっ…うう…」
たまたまアジトに帰ってきた手下の一人だった。
「コイツもお前らの仲間っぽかったからよ…適当にボコって道案内してもらったぜ」
女を拘束していた男たちが手を離し、京に向き直る。
「さぁーて…オイそこの三人!なにオレの事シカトしてくれてんだよ!すぐそこにいただろがその目は飾りかぁ?!」
「んだとテメェ…!!」
「大体お前らなんでそんな悪モンのテンプレみたいな見た目してんだ?!やっぱ根っからの悪者は勝手に見た目もそうなっちまうのかなぁ?めちゃくちゃ小物くせぇんだよちっとはオレを見習ったらどうだ?!」
「もういい…」
大柄な男…ボスのグルードが京のほうへ向かってきた。
「自分の置かれている状況が分かってないみたいだな。仲間も連れてこずにたった一人で来るとは。」
女が連れて行かれたことに気を取られて、アジト内にどれぐらいの人数がいるかまでは考えていなかった。見た感じ30人はいる。後ろからまた音が聞こえ、また手下たちが数人入ってきた。これで完全に退路を防がれてしまった…。
「全員ボコれば一緒だろぉ!」
京が飛びかかり部下を殴り飛ばしたことが、開戦のゴングとなった。次々と向かってくる手下たちを、一人、また一人と殴り飛ばしていく。後ろから腕を掴まれるが、頭突きで倒し腕を離す。
桂威流古武術は、八百年の歴史を持つ由緒正しい流派だ。スポーツ空手などとは違い、実際の殺し合いを想定した型である為、目潰しに金的、頭突きなどなんでもありの相手に致命傷を与える為の技なのだ。
向かってくる手下たちの眼を潰し、喉をえぐり、骨を砕き、少ない打撃で致命傷を与えていく…。三十人ほどいた部下も、気づけば数人にまで減っていた。
「さぁ…こいよ、デカブツ!」
男たちのボス、グルードが立ち上がる。
「少しは出来るみたいだな…」




