第四話
町外れの平野に来た。まずはイナが魔法を見せてくれるという。
「ではいきます…『サンダー』!」
イナが呪文を唱えると、強烈な雷が落ちた。京はあまりに現実離れした状況に、しばらくなにも言えなかった。
「すみません、この辺りは人もいるかもしれないので…初級魔法しか見せてあげられませんが」
(初級…?うっっそだろ、あんなん喰らったら余裕で死ねるぜ…)
「まずは魔力のコントロールから始めましょう。」
イナはそう言うと、手のひらくらいの大きさの石を取り出した。
「この石は魔力に反応して光るんです。私たちが魔力を流すと壊れてしまいますが、初心者が魔力の扱いを練習するには丁度いいんです」
「おう!やってみるぜ!」
とは言ったが、京は魔力の出し方なんて知らない。
とりあえず両手をかざして力を入れてみる。
……光らない。
「…なぁ、魔力ってやつはどんな感じで出してるんだ?なんかコツとかないのか?」
「コツ…ですか、そうですね…体に魔力が流れているイメージで、その流れを手に持って来るのです」
…今の説明で、京は理解出来たのだろうか。
「んん〜…やってみるぜ」
日が傾いてきた。石は光らない。あれから2時間ほど石を光らせるために試行錯誤したが、京は石を光らせることが出来なかった。
「あぁクソッ!全っっ然光らねぇぞ!」
「魔力量が少なすぎて反応していないのでしょうか…」
「もっと力ぁ入れたらイイのか…?流れる感覚をもっと意識して…うおらぁ!!!」
…光らない。
「そろそろ日が暮れますね。町でご飯でも食べましょう。」
「…でも俺金持ってねぇぜ」
「私が払いますよ。あなた、お腹空いてますよね?」
「えまじで?!いいんか!ヤッター!」
町の料亭。京とイナは、二人で顔ぐらいの大きさの肉を食べていた。
「うめぇな!米が欲しくなるぜ!」
「コメ…ですか?」
「そうそうコメ!白いツブツブ?でよ!もっちりしてて肉に合うんだよ!」
京の説明で、イナはイモムシのようなものを想像した。
「それ…美味しいんですか?あなたの居た世界の食文化は変わっているのですね…」
「変わってねぇよ!こっちの飯とそこまで変わらねえって!…こんなサイズの肉は見たことねぇけどな!」
京はふと思った。こんなデケェ肉、いくらするんだ?払ってくれるとは言ったが…本当にいいのか?
「あそうだ、魔力のトレーニングの事ですが…明日はモンスターと戦ってみましょう」
「…へ?もんすたー?」
「戦ってると勝手に魔力が扱えるようになってたりするものですよ、実戦あるのみです」
「モンスターって…?どこにそんなヤツいるんだよ、ゲームじゃあるまいし…」
ここまで言って京は思い出した。ここは異世界。なにが起きても不思議ではないのだ。人が雷を撃とうが、その辺にモンスターがいようがそれは不思議ではない。
「…いや、なんでもねぇ。そのモンスターってのは俺でも勝てそうな相手か?魔法なんて使えねぇけど」
「この世界に住んでいる人全員が魔法を使える、というわけではないのですよ。私のように雷を落とせる人間は少数、3割くらいですね。明日戦うのは、魔力ゼロでも勝てるようなモンスターです。」
「へっ!じゃあ大したことなさそうじゃねぇか!いいぜ!ボッコボコにしてやる!」
明日、京はこの異世界の洗礼を受けることになる。