第三十九話
「さぁて…どんな顔をしてるのかな?!」
セファエルが京の顔を覗き込んだ…その時。水から手が飛び出てきて、セファエルの服の襟を掴む。
「…あ?」
すると…中庭の中心から、突然巨大な竜巻が現れた。
「うわぁっ!!」「なっ、なんだ…?!」
竜巻はセファエルを吹き飛ばし、京を閉じ込めていた水も吹き飛ばしてしまった。
「ゴホッ…ゴホッ!はぁ、はぁ…!」
マジで死ぬところだった…ふと横を見ると、見慣れた長い黒髪の狼のようないでたちの男。
(ウォン…!アイツ!)
ウォンは京に向かって親指を立てている。今回はウォンに命を救われた…すぐに立ち上がり、セファエルの元へ走る。
「いって…なんだぁ?!今のは!」
セファエルが起き上がった時には、京は拳が届く十分な距離まで近付いていた。
「はっ!水盾…!」
「んなもん効くかァ!」
水の盾を貫通して…京の拳はセファエルの顔面を殴り抜いた。
かなりの勢いでセファエルが吹っ飛ぶ。まだ終わりではない。
「さぁて…オレの必殺技も喰らってもらおうか!オラ立て!」
セファエルの服の襟を掴んで起こす。軽い脳震盪を起こしているようだ、フラフラしている。
「これは…かなり痛いぜ?!」
思いっきりセファエルのタマを蹴り上げる。これが、京の究極奥義なのだ。
「がぁぁあああ!!!」
セファエルはうずくまり、悶絶している。勝負アリだ。
野次馬たちから歓声が上がる…いや、歓声というより悲鳴だ。
「さて…どんな顔してんのかな…ひっ!」
京がセファエルの顔を覗き込むと、まるでフグのような顔をして痙攣している。もしかしたら…タマが潰れているのかもしれない!
「マズイ!こりゃ医務室に連れていかねぇと…おいウォン!手伝え!」
ウォンも察したのだろう。すぐに駆けつけて、二人でセファエルを医務室へ連れて行った。野次馬たちの間を通る時、アイリスを見かけた。なんだか嬉しそうな顔をしていた…が、話している余裕はなかったので、そのまま医務室へ走った。
セファエルを医務室に連れて行き、先生には訓練中の事故だと説明した。うー、うー、と唸り続けていて、正直ホラーだった…。
それから京は先生にかなーり叱られた。タマが砕け、骨盤に少しヒビが入っていたらしい…。魔法というものは便利だ。二日で全回復は出来るそうだ。
「いやー悪かったなウォン!巻き込んじまってよ!」
「チッ…まさか俺まで絞られる事になるとはな…」
時は夕暮れ。京とウォンは二人で寮へと帰る途中だ。
「試合中も助かったぜ…あの時竜巻を起こしてくれてなかったら、本当に溺れ死んでたかもしれねぇ…」
「俺が手を出さなくても、なんとかなりそうだったがな」
「まぁな…でも、助かったぜ、ありがとな!」
フッ、とウォンが鼻で笑い、帰り道には心地よい風が吹いた。