第三十三話
両手は使えず、視力も奪われ…近くには剣を持った女が居て、自分を殺そうとしている…。こんな時、あなたならどうする?
「ぐっう…おいウォン!助けろ!!」
京は大声でウォンに助けを求める。しかし…
「俺も今は動けん」
「はぁ?!クッソ使えねぇな?!気合いで動けよ!」
「ッ…なんだと貴様、ここまで俺を連れ回しておいて…」
「ハッ!そうだ!命だけは助けてくれ!ほら、靴でもなんでも舐めますから…命だけはぁ!」
京は地面に膝をつき、エイシアに命乞いをする。
「フン…その姿、今のお前にお似合いだな。闇の力に手を染めた小汚い犬が…」
エイシアは京に近づく。一歩、また一歩…京に向かって歩みを進める。そして、剣を京に目掛けて振り下ろす…その時だった。
京の回し蹴りが、エイシアの首付近に直撃する。突然のことで防御できなかったエイシアは、そのまま地面に倒れた。
「フゥー…もしかしたらオレ、役者とか向いてるかもしれねぇな。今の足音と声で、お前がどこにいるかハッキリ分かったぜ…。」
周りの景色が見えた。エイシアの魔法が消え、京とウォンの拘束が解ける。残りの兵士たちをどうにかしなければ…。
「オォーーイお前ら!お前らの団長とやらはここでオネンネしてるぜ!こっから離れねぇとコイツをブッ殺すぞ?!」
ウォンがエイシアの首にナイフを突きつける。兵士たちは少しづつ後ずさりしていき、少し空間が生まれた。
「とはいえ…このまま帰るわけにはいかない。なんとかして、俺たちの誤解を解かなくてはな」
確かにそうだ…闇の力に手を染めた、なんてデマが学校にまで広がったら、退学なんてことにもなるかもしれない…それだけはゴメンだ。京とウォンは、エイシアが目を覚ますのも待った。
しばらくすると、エイシアが目を覚ました。
「なっ…貴様ら!」
京がエイシアの顔を覗き込むと、エイシアはすこし怯えたような表情をして、京の顔を叩いた。
「ぐへっ!いってぇな…またやっちまうぞ?!」
「キョウ、待て…おい女、こいつは闇の力に触れてなどいない。お前も分かっているんだろう?」
ウォンがエイシアに話す。
「…ローゼ様がそう言ったのだ。その男の中には闇の魔力が流れている…」
エイシアは認めてくれない…どうするべきか。
「あ!だったらよ、あの心を読めるちっちゃいヤツ!クスィーだったか?そいつに頼んで心を読んで貰えばいいんだ!オレ天才!」
すると、エイシアが困惑したような顔をして、なにか考え込んでいる。
「…そんなやつは、聖騎士団の中にはいないぞ」
京とウォンは顔を見合わせる。あいつは騎士団ではなかったのか?だが…騎士団ではなくても、名前を言えば誰のことかなど分かるはず…では、なぜこいつはクスィーのことを知らない?
「うわぁっ!」
声が聞こえて後ろを振り向くと、兵士たちが倒れている。そして、京たちの近くに、黒いモヤに包まれた人物が立っていた。
「…なんだ、テメェ…」
よく見ると…女だ。それも見たことのある顔。
「そうだよ、私…クスィーだよっ、ハハハ!」
先ほどみた彼女とはかなり雰囲気が違う…だが、京の中にあった闇の魔力の持ち主が彼女であることはよく分かった。
「なるほどな…貴様が犯人だったか」
「そうだよぉ…ふふっ、力を隠すのにすっごく苦労したんだから」
兵士たちを見てみると、皆ピクリとも動かない。死んでいるのだろうか…
「貴様…闇の魔力を持っているのか?!」
エイシアはついさっきまで彼女と一緒に居たというのに、全く記憶にないようだ。彼女のスキルのせいだろうか。ウォンがクスィーを指差し、話し始める。
「貴様のスキルは…心を読む、などというものではないな?恐らくは…洗脳、というべきだろうな」
「へぇ…正解だよ!リザードマンの巣にたった一人で来た団長さんを洗脳して、部下だと思い込ませたの…そして、君たちを治療する時に、闇の魔力を少し混ぜておいたの!」
クスィーが高笑いする。ここで京はある事に気付く。
(…?!花が…枯れてる?)




