第三十二話
京達は今、堂々と町を歩いている。ついさっき、こちらに向かってきた二人の兵士を締め上げて気絶させ、着ていたものを奪ったのだ。
「まさかこんなに上手くいくとは思わなかったぜ…」
「黙って歩け」
案外気付かれないもので、もうすぐここを抜けられそうだ。しかし…一見すると花の咲き乱れる美しいこの国は、その花を通して彼女に監視されている…もうすぐ門だ、というところで、地面から花が生えてきた。その花はあっという間に京よりも大きくなり、全長2メートル程の人型のモンスターへと姿を変えた。
「うげぇ…なんかキモイぞ」
食虫植物のようなグロテスクな顔面、体も植物で構成されており、まるで花に寄生された人間だ。
「まずいな…さっさと片付けるぞ」
重い鎧を脱ぎ捨て、京とウォンは戦闘体制に入った。
「おいキョウ…ちゃんと魔法の使い方は聞いていたんだろう、今のお前ならメラぐらいなら撃てるはずだ」
「そんないきなり撃てっかよ…!まぁ、やり方は分かるぜ」
「植物ごとき燃やしてしまえばいい…バーベキューだ」
こんな状況だ、あまり騒ぎは起こしたくないが…静かに戦えるほど、京とウォンは器用ではなかった。花のモンスターが唸り、こちらに向かってくる。京とウォンは同時に走り出し、一気に間合いを詰める。
そして、二人同時に火炎魔法を放った。
「メ゛ラ゛!!」
しかし誤算だった。京の放った魔法は京の手の付近で爆発、京とウォンも爆風で吹き飛ばされてしまった。
「ギャァア゛!!」
花のモンスターは奇声をあげながらのたうち回る。火だるまになった花は、少しすると黒焦げになった。
「チッ…ぐぐ、キョウ、貴様というやつは…」
「いってて…おい見たか?!魔法出たぜ!」
足音が聞こえてくる…今の爆発で、完全に位置がバレたようだ。
「おい、こっちだ!こっちだぞぉ!」
「…やっちまった」
もうすぐ出口であるにも関わらず、また兵士たちに包囲されてしまった。また風を起こして逃げ出そうとすると、ウォン目掛けて光の剣が飛んでくる。ウォンは剣を風で防ぐ。
「大人しくしろ…これだけの人数差だ、お前たちでは逃げられない。手を上げろ」
エイシアだ…一番厄介な奴が来てしまった。
「…貴様のスキル、光を具現化出来るのか?」
「貴様らの質問に答える義理はない」
エイシアが腰にかけていた鞘から剣を抜く。
(マズイ…どうする?このままじゃやられちまう…!)
王道主人公なら、ここでビビッと閃き乗り越えるかもしれない…しかし、ここにいるのはただの桂威京だ、閃きなどない。
「クソが!全員殴り倒してやるぜ!!」
京とウォンは、たった二人で大勢の兵士たちに向かって行った。京はついさっき習得した魔法を拳に纏わせて攻撃する。パンチが兵士たちに当たると思いっきり爆ぜる。京にもまあまあなダメージはあるが、爆発でかなりの数の兵士を倒せる…使わない手はない。京とウォンは迫り来る兵士を殴り倒していく。しかし…その手はすぐ止まることになる。
「光の拘束!」
バチリと京とウォンの腕に、光のようなものが巻かれる。
「チッ!あの女…」
兵士たちは皆剣を持っている。ここで殺されてもおかしくない…。
「おいウォン!これ解けねぇのか?!」
「…今試している!」
幸いまだ足は動かせるので、京は回し蹴りや膝蹴りで兵士を倒していく。すると…京の目の前に、エイシアが現れたかと思うと、突然視界が真っ白になる。
「ぐっぐ…!」
なにも見えない…すると、胸の辺りに鋭い痛みが走った。
斬られた…振り下ろされたエイシアの剣は、京の胸を切り裂いた。魔力伝導矯正スーツのお陰で、魔力でガードすることが出来たが、それでも脅威であることに間違いはない…まだ目が見えない。見えないというより、なにかで目を覆われているような…
「魔力でガードしたのか…まあいい、次で終わらせる」
(…光だ!アイツの能力で目を覆ってるのか…!両腕も動かせねぇし…どうする?!どうやって切り抜ける?!)




