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第三十一話

「あぁ、失礼…私は花の『心』が分かるのです。なので、花達がなにを見て、なにを感じたかが分かるのですよ」

どうやらこのお嬢様のスキルは、花と意思疎通することらしい。まさか本当に花がなにか喋っているとは思わず京は「はぁ」と間の抜けた返事をする事しかできなかった。

「花は貴方から、『巨大な魔力』を感じ取ったようです…。しかし、それは貴方のものではない…別の誰かの魔力です」

「へぇ…そりゃウォンの魔力じゃねーのか?」

「そんな訳がないだろう。」

ウォンもなんのことか分からないようだ…エイシアが話し始める。

「彼はプラシーボストーンから魔力を得ています…その力とはまた違うのでしょうか?」

「いえ…そんなちっぽけなものではないの。はっきり言って、その魔力の持ち主は危険です。魔力の中に…『闇属性』の力が混じっています」

闇属性…そんな属性の魔法は聞いたことがない。

「なぁウォン…闇属性ってなんだ?」

ウォンも少し驚いているようだが、京の質問に答える。

「闇属性…禁断の魔法だ。人を殺すことに特化した力。数百年前に封印された『闇の主』の残した力らしい。」

…不穏な空気が立ち込める。周りの視線が痛い。

「その魔力、一体どこで…まさか、闇の力を持っている…?」

ローゼの表情が変わった。京に対してかなり怯えているようだ。

「貴様ら!動くな!!」

エイシアが剣を抜いた。それに合わせて、他の兵士たちも剣を抜く。あっという間に囲まれてしまった。

「なるほどな…あのリザードマンの拠点をたった二人で制圧出来たのも、闇の力を使ったからだったんだな?」

エイシアが京達に剣先を向ける。

「はっ?!オイオイ、なんの話してんだ?ドッキリかよ?!」

訳が分からない…だが、今の京とウォンは絶体絶命、ということはよく分かる。ローゼが答える。

「冗談ではありません…この『光の国』に、闇の力は絶対に持ち込んではならないのです!兵士たちよ、彼らを捕えなさい!」

その掛け声を合図に、兵士たちが京とウォンに襲いかかる。

「チッ…!逃げるぞ!京!」

ウォンは周りに強い風を起こした。兵士たちが怯んだ隙に、二人は兵士たちの間を通り抜けて、ローゼの部屋から脱出した。長い廊下を走り抜け、門から外に出ようとした時だった…。何かが横から伸びてきて、京の足を掴んだ。

「うがっ!」

京は思いっきり転けてしまった。足を見ると…ツルのようなものが絡みついている。

「これってまさか…あのお嬢様の能力か?!」

京はツルを引きちぎり、またウォンと走り出した。門を抜けると、ウォンが京の手を引き、橋の下まで連れて行った。

「あまり大きな声で喋るなよ…あの女は花の視覚、聴覚を共有出来る。この国はあの女に常に監視されているんだ…。」

ウォンが京のほうを見る。言いたいことは大体わかる、何故闇の力を持っているのか、ということだろう…。しかし、京もそれは知らない。それに、それらしき人物と会ったこともない。

「京…俺は正直、貴様が闇の力を持っているとは思えない。誰かに嵌められたようだな…。」

「お前は信じてくれるんだな…?じゃ、さっきみてえに全員ぶっ倒そうぜ?」

「残念だが…今回はそうもいかない。光の騎士団はかなりの強者が集まっている…俺たち二人でなんとか出来る相手ではない」

ならば…今の二人に残された選択肢は二つ。一つは大人しく降伏し、牢の中にぶち込まれ、最悪殺される。もう一つは、こっそりここを抜け出し、逃げ延びること…だ。

「クソっ、とりあえずこっから逃げるぞ」

影から外を覗くと、かなりの数の兵士が辺りを捜索している。すると…二人の兵士がこちらに近づいてくる。

「あいつらどこ行きやがったんだ…オイ!そっちはいたか?!」

兵士の声が聞こえる…まずい、もうすぐそこにいる。

「オイオイオイオイ、どーすんだよコレ…!」

「…ハッ!俺にいい案がある」

ウォンがなにか閃いたようだ。京の命運は、ウォンの閃きにかかっている…。





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