第三十話
要塞のようなリザードマンの巣を出ると、外には多くの兵士たちがいた。アストレア王国の兵だろう。
「さぁ、乗れ」
エイシアが指差すのは、馬車だった。流石に車などというハイテクなものは無いだろうと思っていたが…本当にゲームの中みたいだ。兵士たちはここまで歩いて来たようだ、馬車に乗れるのはエイシアとクスィー、そして京とウォンだけだ。馬車は四人を乗せて、アストレア王国へ向かって走り出した。馬車はかなり狭い、キツキツだ。
「…敵意はないんだよな?だったらなんでアンタらの国まで行かなきゃいけねぇんだ…?」
「不本意ではあるが、君たちは我が国の恩人だ。女王様に会いに行ってもらう。なにか褒美があるハズだ。」
「褒美?!金か?」
「…うるさい」
エイシアはかなり京のことを嫌っているようだ…。京も自分が嫌われている事に気づいたが、なぜここまで嫌われているのかまでは理解できなかった…。ウォンはというと…心を読める少女、クスィーをずっと睨みつけている。何も話さず…ずっと。
「ひっ…な、なんですか…?」
クスィーが聞くが、ウォンはなにも答えない。ウォンをクスィーの隣に座らせたのは失敗だったようだ。
「おいウォン、あんま睨みつけてやんなよ…警戒してんのか?」
京がウォンに注意すると、ウォンは目線を京のほうに移した。
「心を読む能力…少し気になってな。どこまで俺の心の中が見られる?過去まで分かるのか?それとも今考えていることしか分からないのか?そうだ、おいチビ、俺の好物はなにか分かるか?」
今までダンマリだったロン毛が急に喋り出したので、クスィーはかなり怯えている。
「ひっひ…!!」
「おいウォン!やめとけ…捕まんぞ」
京は気付いていた…京の隣にいるエイシアが、ウォンをすごい目で睨みつけていることに。馬車の中の空気は最悪だ。とにかく京は早くこの馬車から降りたかった…。
地獄のような空気が流れる馬車が止まった。どうやら目的地に着いたようだ。外を見てみると、ティアー王国とはまた違う町が広がっていた。
「着いたぞ、ほらさっさと降りろ。」
「わーってるって、急かすなよ…」
四人は馬車から降り、アストレア王国の国王の元へ向かう。京は歩きながら周りを見ていると、ある事に気付く。花が多い…。町の至る所に、色んな色の花が咲いている…風に乗って花の香りがやってきて、深呼吸すると気持ちがいい。
しばらく歩くと、大きな門の前にやってきた…。
「入れ、ここだ。」
門が開き城の中に入ると、豪華ながらもギラギラしすぎない、丁度良いバランスの内装が広がっている。京がそんな光景に驚いて立ち尽くしていると、後ろからエイシアに押される。
「ほら、早く歩け。」
「あークソ!わーってるっつの!」
城の奥へと進んでいく。廊下を歩いていくと、一際目立つ扉を見つけた。ここはなんだか花の匂いが強い気がする…。
「ローゼ様、失礼します。」
扉の先には、まさにお嬢様、という見た目をした女性が、大きな椅子に座っていた。白とピンクのドレスを身につけている。
「よくぞ戻りました、エイシア騎士団長。おや…そちらの方は?」
「リザードマンとその長、グレイザードの討伐に助力いただいた者たちです。」
(助力って…全部オレ達が倒したんだろが…)
ローゼ、と呼ばれていたお嬢様は椅子を立ち、京とウォンの元へ歩いてくる。
「そうでしたか。お二方、我が国の騎士たちにご助力いただき、ありがとうございます。感謝申し上げます。」
というと、京を見つめる。
(…なんだコイツ…じろじろ見てきやがって。なんか言えよ)
なんて思っていると、ローゼが口を開く。
「…そちらのお方、あまり見ない服装ですね…転移者ですか?」
「あぁ、テンイシャってやつだぜ」
「…先ほどから少し、花たちが騒いでいるのです。
貴方たちに花がなにか、伝えたいのかもしれませんね…。」
京はこのお嬢様の言っていることの意味を考える…。
「…何言ってんだ、花が騒ぐってよ。花がなんか喋るわけねーだろ」
「無礼者!」
エイシアが光の棒のようなもので京の頭を叩く。
「うあ゛っ!!いっっ…!!」
(チッ…コイツ、オレのこと嫌いすぎだろ…!
クッソ!ムカついてきたぜ…)




