第二十七話
能天気な京でも、流石に力の差を実感した。
「いってぇ…オイオイ、マジかよ」
ウォンもさっきの一撃がかなり効いているようだ…頭からは血が出ている。
「チッ…鬱陶しいやつだ」
ウォンは舌打ちすると立ち上がり、魔力を溜める。すると今度は、グレイザードのほうが距離を詰めてきた。京とウォンの首を掴み、壁に叩きつける。
「あがっッ…!!」「ぐぅっ!!」
そして今度は後頭部を掴むと地面に思いっきり叩きつけた。意識が朦朧としてくる…なんて力だ、正直敵う気がしない。
「痛えんだよクソトカゲッ!」
すぐに京が起き上がり、顔面目掛けて蹴りを放つ。しかし、蹴った足を掴まれ、体が宙に浮く…やばい、叩きつけられる。そう思った時だった。
「グアアッッ!」
グレイザードの悲鳴が聞こえたかと思うと、足から手が離れる。着地し状況を確認すると、グレイザードが目を抑えている。ウォンが風魔法を目に直撃させたようだ。
「サンキュー、ウォン…正直助かったぜ」
「言ってる場合か!畳み掛けるぞ」
京はグレイザードの顎を思いっきり殴り上げ、さらにハイキックを食らわせる。渾身の一撃だが、手応えが思ったより浅い。
「風塵鎌!!」
ウォンの風魔法が、硬い鱗を少しづつ削ぎ落としていく…。
「じっくり調理してやるぞ…」
グレイザードの皮膚から血が吹き出す。少しづつダメージが入ってきている。
「ガァァァァアアア!!」
グレイザードが激しく唸り、尻尾でウォンをなぎ払う。ウォンはなんとかガードしたが、ガード越しでもかなりの威力だ…
「いい加減くたばれッ!」
京がボディブローを打ち込む。少しづつ効いてきているようだ。畳み掛けるように3連撃、それから思いっきり前蹴りを繰り出す。
「ウグオッ…邪魔だ!」
容赦のないアッパーが京を襲う。京は上に2メートルほど吹き飛ばされ、そのまま地面に落ちた。
「蠅どもが…叩き潰してヤル!!」
京の服をグレイザードが掴む。
「やっやばいッ!」
しかし、京は学ランを脱いで脱出し、なんとか距離を取る。
「キョウ!どけぇ!」
後ろを向くと、ウォンが突っ込んでくる。右手は風を纏っており、避けなければ自分も巻き込まれる、と京は感じた。
「死ねィ!嵐削殺!」
爪で削ぐように、ウォンが腕を振り上げる。ウォンの爪は硬い鱗を貫通し、グレイザードの腹部から血が吹き出す。しかし…まだグレイザードは倒れない。ウォンの顔面を掴み、腹を殴る。
「ごぉっ…!」
「まずはお前から殺してやる…!!」
「させるかぁッ!」
すかさず京が飛び込み、『気合』でグレイザードの腕をぶん殴る。腕が離れ、ウォンが地面に倒れる。
「後は任せろよ…!」
京とグレイザードが向き合う。この体格差では投げ技は無理だろう…殴り合うしかない。京は『気合』を思いっきり投げつける。グレイザードは難なく払いのける…が、その直後に来た京の拳が直撃する。
「ウガァッ!」
さらにボディに膝を入れ、そのまま回し蹴りを食らわせる。
(さぁーて…そろそろだろ…)
「ウグッ!ググゥ…!!」
ついにグレイザードが体勢を崩し、前屈みになる。京はこの時を待っていた…。
「やっと頭がいい位置に来たな…」
京はグレイザードの顔を思いっきり蹴り上げ、さらに後ろ回し蹴りを食らわせる…手応え、アリだ。
「グオオォォ…」
グレイザードはドスンと音を立てて倒れた。起き上がっては来ない。
「よぉーし…はぁー危なかった…」
この異世界で出会った中でも、トップクラスに強いモンスターだった…京は寝そべっているウォンの横に座り、休憩する事にした。
しばらくすると、ウォンが起き上がった。
「…チッ」
ウォンは自分が気を失っていたのが気に食わないようだ…
「よく寝てたなぁウォン…でもよ、まだやる事は残ってるだろ?」
「魔力の増える石だったな…?あるとすればこの辺だろう」
京とウォンは起き上がり、辺りを調べてみる。趣味の悪い石像や装飾品、宝石のようなものは出てくるが…魔法の石とやらは見つからない。ウォンが戻ってきた。
「見つけたぞ」
「えっマジィ?!」
ウォンは手にそれらしき石を持っている。微かだが、虹色の光を放っている…だが、どうすればその石から魔力を貰えるのかが謎だ。
「どうすればいいんだこれ…ちょっとかじってみるわ」
「…正気か?」
京は思い切って、石をかじってみる事にした…。




