第二十一話
次の日、アラームの音で目を覚ます。大きな欠伸をするとベッドから起き上がり、寝癖を直す。この世界にはドライヤーなどというハイテクなものは存在しないが、代わりに魔法アイテムがある。円形で、丁度片手で持てるぐらいのサイズだ。乾電池のようなものを差し込むと、そこに蓄積された魔力を消費して温風を出すようだ。
「うっわなんだこれ、使いにくいなぁ…」
なんとか髪を乾かすと学ランを着て下の階に向かう。この寮は朝食と夕食が付いている。下に行くと丁度ウォンが朝食を食べていた。
「お、ウォンじゃねぇか」
「…ああ、キョウか」
軽く挨拶を交わし、二人で朝食を食べると、そのまま学校へと向かった。正門をくぐると、大きく紙が張り出されていた。クラス表らしい。
「お、これクラス分けじゃねぇか?」
「そのようだな…」
クラス分けを見てみると…京は二組、ウォンは三組だった。
「あら…クラス違うな」
「あぁ」
「オイオイ、そんな落ち込むなって!別に死ぬわけじゃねんだから」
「貴様の頭はお花畑か?どう見れば俺が落ち込んでいるように見えるんだ」
「へへ、朝っぱらからイライラしてんじゃねぇぜ?」
「貴様がイライラさせているんだ…死ね」
ウォンはそう言い残すと、三組の教室に入って行ってしまった。ウォンの後ろ姿を見送り、京も二組の教室に入る。中に入ると、二組の奴らが一斉に京の方を向いた。
「え、あれって魔力2の…」「マジかよ、このクラスだったのか…」
どうやら京はかなりの有名人らしい。もちろん悪い意味で。
「魔力2?マジかよ聞いた事ねぇぜ!」
一人の生徒が京に近づいてくる。いかにもワルそうな顔だ。
「オイ、お前…今日から俺の下僕な」
なんだコイツは…いきなりなにを言い出すんだ。ジョークにしても面白くない、初日からドスベリだ…。だが、こいつは本気らしい。
「魔力がねぇヤツには人権なんてねぇんだよ…ココはそういう場所だ。お前みたいな奴は、こき使われる運命なんだよ」
こんなことを普通に言えるやつがいるのか…寒すぎる。京は思わず吹き出した。
「プッハハ!そこまで来るとウザい通り越して面白いぜ…」
クラス内がざわつき始めた。京もかなりイラついており、一触即発の雰囲気だ…すると、また一人の男子が立ち上がる。
「おい、ちょっと待てよ!そいつ、入学試験のトップ10に入ってたぞ!一年の中で2番目に魔力が高いウォンにも勝ってた!」
「…は?それマジで言ってんのか?」
絡んできた男子が怪訝な顔をする。彼は入学試験を見ていなかったようだ。
「ハッ、どうせイカサマでもしたんだろ。そんなカスみたいな魔力でアイツに勝てるわけないだろ?」
「イカサマって…そういうのはあのオニキスとかいうぼっちゃまに言ってくれよ。俺は正々堂々と勝ったんだぜ?」
「そうだな…じゃあ俺と勝負しろよ。そこまで言うんなら出来るんだよな?」
どこまでもぶっ飛んだ野郎だ…。入学ほぼ初日に喧嘩するバカがどこにいるんだ。
「いやしねぇよ…なんでテメェとやらなきゃなんねぇんだ?」
「逃げるんだな?ほらやっぱりな!コイツはイカサマで勝ったんだ!」
「いやなんでそうなるんだよ…」
やばい、ぶん殴りたい…しかし京はそんな気持ちを抑える。初日に面倒ごとを起こすわけには行かない。そんな事をすれば、今まで助けてくれたイナに面目が立たない…。
「ちょっと、君たち…なにを騒いでるんだい?」
聞き覚えのある声…アイリスだ。どうやら同じクラスだったらしい。
「って、あれ?キョウじゃないか。昨日ぶりだね」
アイリスが教室に入ってくると、クラスがさらに騒がしくなった。
「えっ!あれってあのヴィクトリー家の…?!」「一緒のクラスかよ!」
京に絡んできた男子も、アイリスの登場に面食らっている。
「…で、外まで声が聞こえてたよ。キョウ、初日からなにやってんのさ…」
「バッカ違えよ、なんもしてねえって!」
「へぇ…ねぇ君、キョウになにかされてない?」
絡んできた男子がビクッとした。体が強張っている。
「いっいや…なにも、されてません…」
「なんで敬語なのさ、同級生だろ?タメ口でいいよ。コイツみたいにね」
アイリスは京を指差す。
「うっさいぜ」
男子は少し悔しそうな顔をして、逃げるように席に戻って行った。




