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第十三話

試験会場は、ざわめきに包まれていた…。

鎧を着込み、狂気的な武器を携えた貴族が、一人の少年をボコボコにしているのだ。観客から見れば、これは試験などではない。

「オイオイ、大丈夫かあれ…」

「あの子、死んじゃうんじゃ…」

この状況を見れば、誰だってそう思うだろう…しかし、一人の少女は、この状況を楽しんでいるように見えた。

「京さん…ここからどう逆転するのでしょうか。」

少女…イナは微笑む。彼女は京が必ず勝つと、そう思っていた。


「これで分かったろ?金の力に勝るものなんてないんだよ!」

アントニア・オニキスが京の頭めがけて棒を振り下ろす。

直撃…かと思われたが、京はそれをかわしてみせた。

「チッ…まだ動けるのか」

「いってぇな…客が引いてんだろ…」

体に上手く力が入らない。指先、足先が痺れる…

「そういえばよぉ…そんなでっけぇ鎧着けてんのによ、俺に殴られた時、痛いって言ってたよなぁ?」

「…は?なんだよいきなり」

「情けねぇと思わねぇか?そんな!ガッチガチの鎧を着てても!お前は素手の俺に痛いって言わされてるんだぜ?!っへへ、なんか笑けてきたなぁ!」

「…っ、さっきからなんなんだ?勝てないと分かったから少しでもボクをイラつかせようとしてるのか?見苦しいぞ!」

「いいーや、違うぜ…これでちっとは動けるようになったな」

「はぁ…?どういう」

京は走り出し、一気に間合いを詰める。そして、アントニアの胸に目掛けて思いっきり前蹴りを繰り出した。

「うぐっ!!」

アントニアは体勢が崩れ、後ろに倒れ込む。すかさず京は足でアントニアの首と腕を押さえ込む。三角絞めだ。

「ぁあっ!いっ痛い!折れちゃう!」

「タップしな!じゃねぇとホントに折っちまうぜ!」

痛みのあまり、アントニアは泣き叫んでいる。しかし、京は力を緩めず、むしろ締める力を強めた。

「わっ、分かった!降参する!降参するから離してよぉ!」

勝負アリ、だ。審判が笛を鳴らし、試合終了の合図をする。第一回戦、京は無事勝利することが出来たのだ。会場は歓声に包まれ、京も拳を天に突き出してみせた。

「さ…坊ちゃん、金じゃ勝ちは買えねぇって、分かってもらえたか?」

そんな捨て台詞の残し、京は会場を後にした。


待合室に戻ると、数人の男子に声をかけられた。

「なぁアンタ!さっきのすごかったな!あのアントニアに魔法なしで勝ってまうなんてよ!」

「君、転移者なんだよね!アントニアを倒した技は、君の元々いた世界の技なのかい?すごいね!」

「あぁ、分かった、分かったから静かにしてくれ…」

さきほどの戦いでかなりのダメージを受け、大きな声もかなり頭に響く。それに、動けるとはいえ、まだ体が痺れている。

(クソ…こんなんじゃ次は勝てねぇかもしれねぇ…どうする?)

拳を握ってみる…ダメだ、握り込めない。頭もガンガンする。途方に暮れていると、一人の女性が待合室に入って来た。

「こんにちは、私は本校の医療魔法科のものです。怪我をされている方はいませんか?」

…救世主かもしれない。医療魔法…聞いた感じ、怪我も治せそうだ。

「はいはい!俺!俺怪我人です!」

「あら、ではこちらへどうぞ」

待合室とは違う部屋に連れてこられた。

「君は…さっきの試験の子だよね。かなり酷くやられてたね」

「あぁ、そりゃあもう…ていうか、あんな武器の持ち込みって許されてるんすか?」

「まぁ…明確な殺意のある武器以外は許可されています」

明確な殺意。あの機械仕掛けの電撃棒には、殺意はないと学校は考えたようだ。立ち会った京なら分かる、普通に殺意しかない。

「はぁ…そうなんすね」

「では、上着を脱いでください」

そう言われ、京が上着を脱ぐと、先生が京の胸あたりに手をかざす。すると、緑がかった光が放たれ、京の状態はすぐに回復した。

「す…すげぇ!痺れがなくなってる!」

「医療魔法を使ったので…当然でしょう?」

そうだ、ここは異世界…魔法で傷が治るのも当たり前らしい。

京は礼を言うと待合室に戻り、次の戦いに備えた。


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