第一話
主人公の名前は かつらい きょう です
俺は桂威京。高校二年生。桂威流古武術の正統伝承者だ。
部活も特に入らず、彼女も居ない。友達は男ばっかり。
古武術なんてやってるせいか知らないが、死ぬほど
モテない。俺ってこんなにイケメンなのになぁ…。
そんなある日、事件は起きた。中間テストの結果だ。
先生に呼ばれて職員室に行くと、先生はすごく困った顔を
していた。怒りを通り越して呆れている…といった具合だ。
「桂威くん…なぜ私が君を呼んだか分かるかい?」
最近は事件なんて起こしてねえんだけどな…なんでだ?
「わかんねぇっす…どうしたんすか?」
「……中間テスト」
雷が落ちた。その一言は、俺に全てを理解させる。あぁ。
「今回のテストの結果だが…国語以外の全てのテストが
赤点だ…。どういうことかね」
「えっ…国語が、じゃなくて?国語以外すか?!嘘つかないでくださいよ!」
「君…英語なんて白紙で出してるじゃないか!なにふざけた
事言ってるんだ!!」
先生はキレている。確かに英語は名前だけ書いて出した
記憶がある。
「君はもう二年なんだぞ!これからの進路に向けて、真剣に考えなければならない時期だろう!」
「はぁ…すんません」
「何故謝るのだ!これは君自身の問題だろう!大体君は…」
なげえ。もう一時間は話してるぜ。もう稽古も始まっちまってるだろうなぁ。また親父にどやされるぜ…
やっと解放された。時計を見てみると、どうやら三時間は
お説教されていたようだ。日も傾いてきた。
やべーな、早く道場に行かねーと…なんて思って、俺は急いで学校を出た。
稽古に遅れて良かった事なんて一つもない。ある時、
友達と駄菓子屋で喋っていて、稽古に遅れて行った事が
ある。その時、道場の師範である親父は俺が帰ってくるなり
「おい京!!どこほっつき歩いてやがった!!」
と怒鳴った。それからのことはぼんやりとしか
覚えていない。確か…ずっとトレーニングをしていた。
腕立て、スクワット、懸垂、体幹…気が付いた時には
朝だったのだ。
道場に帰ってきた時は夕方だったはずだ。一晩中ずっとトレーニングをしていたのだ。
(オイオイ勘弁してくれ!またあんな事させられんのか?それだけは!それだけは嫌だぜ…チクショウ!)
京の焦りは最高潮。校門を出てから、京は日が沈むより速く走った。もちろん京の体感速度だ、彼はメロスではない。
もうすぐだ!もうすぐ道場に着く!!そんな時だった。
家の前の信号が赤になってしまった。
(クソ!こんな時によぉ…!!早く!早く青に!!)
そんな時だった。猫が横断歩道に飛び出したのだ。
前方からは大型トラック。猫が…轢かれてしまう!
咄嗟に京は道路に飛び出し、猫を庇おうとした。
目の前が真っ暗になる。身体中がビリビリする。
あぁ…轢かれるって、こんな感覚なんだなぁ…。
首だけを動かして横を見ると、そこには猫が倒れていた。
(あぁ…ダメだったか。間に合わなかった…ごめんよ…。)
意識が遠くなっていく。京は道場を目の前にして、
死んでしまったのだった。