表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽葵の見えるもの  作者: チュン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/36

第2話「陽葵もフロイトを見た」(3、)浜井が見せたもの

「知らない外国のオジサンよ」

 という陽葵の言葉を聞くと、浜井は何かウキウキした様子で、その場を離れ、そのまま少し離れた場所にあったイスの上に靴のまま登ると、棚の上にあったダンボール箱を持ち上げ、それを抱えて、陽葵のところに戻って来た。

「陽葵ちゃん、ごめん、もう一度、聞くよ。君には、僕の顔の上に、知らない外国のオジサンが見えるんだね。今も見えるかい?」

 陽葵は浜井の行動に少し驚いたが、敢えて関心のない素振りで、

「うん」

 と答えた。すると浜井は再び大きく目を開いて、ダンボール箱の中から1枚の紙を取り出し、陽葵の前に掲げた。

「その見えるオジサンって、こんな顔かい?」

 見れば、そこには人の顔らしいものが書かれていた。あまり上手ではない、走り書きのような絵だったが、陽葵が少し驚いたのは、その顔に描かれた髭だった。描かれている髭の全体の形が、今、陽葵の目の前に見える顔と同じだったのだ。

「ううん・・・、よく分からないけど、見えてるオジサンと同じ髭のオジサンかな」

 すると、

「そうか、そうか」

 と浜井がうれしそうな声を上げた。

 ただ、陽葵には、まだ確信が持てなかった。確かに髭の形はそっくりでも、絵が走り書きのような簡単な絵だったので、同じ人とまでは思えなかったのだ。

 浜井は、そんな陽葵の様子も、じっくり伺いながら、再び、ダンボール箱の中に手を伸ばした。

「なら、これは、どうだい?」

 次に浜井が取り出し、陽葵に掲げたのも、1枚の紙だった。が、今度は絵ではない。少し古い感じの、人物のモノクロ写真、それをコピーした紙だった。

「あ!」

 陽葵は声を漏らした。陽葵の見る限り、陽葵の目の前に見える顔と、紙に写った人物の顔が、ほとんど同じだったのだ。

 しばらく、言葉も発せず、2つの顔を凝視していた陽葵の顔に、やがて笑顔が浮かんだ。

「あ、そうなんだ。先生も見えるんだね。でも、先生にも同じ顔が見えるって、どういうこと?それは、陽葵の脳が嘘つきじゃないってこと?そうだったら、いいな。陽葵は、陽葵の脳が嘘つきじゃないって、先生に言ってほしいの」

 陽葵は、そう言いながら、やがて大粒の涙を流し始めた。見ていると涙の量は、だんだん増えていくように思われた。

「陽葵ちゃん、君はずっと、罪悪感を抱えてたんだね。でも、心配はいらない。君の脳は嘘つきじゃないし、顔が見えることは、決して、悪いことではないんだよ」

 浜井の言葉に、陽葵の涙が収まって来た。浜井は陽葵が泣き止むのを確認すると、ちょっと困ったような顔を見せて、言った。

「でも陽葵ちゃん、僕には何も見えないし、あの絵を描いたのも、僕じゃないんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ