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陽葵の見えるもの  作者: チュン


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第6話、「陽葵の前にスサノオ!?」(5)

「元気を出してください。あなた、急いでいるんじゃないの?」

 泣き崩れているスサノオに、声を掛ける人がいた。その人を見て、夏井陽葵は、後ろにのけぞるほど驚いた。スサノオの傍らにいたのは、何と、赤井舞の守護霊・松下ありさだった。ありさに声を掛けられたスサノオは、ありさを見ると、見る見る泣き顔が真顔に変わり、再び立ち上がった。陽葵は、そこで改めて、ありさの癒しパワーに感心したが、何も言わず立っている舞は、何も気づいていないようだった。

「塁は、フツーの少年だった。だが、ある日、彼は、学校の隅で、彼の知る学校の先輩が、中学生を含む数人にイジメられているのを目にしたのじゃ。イジメと言っても、ひどいもので、その先輩は、数人に袋叩きに合っておった。止めに入った塁でさえ、その中の数人に顔と腹を殴られる始末だ。だが、そこで塁の怒りが頂点に達すると同時に、私の怒りも頂点に達してしまった。気がつくと、塁の内側から気のパワーがあふれ、その力で相手全員を吹き飛ばしてしまったのじゃ。与えたダメージは、思ったよりもひどかった。ほとんどが骨の数本が折れていて、中には内臓が破裂して緊急入院した者もいた。そして、そんな彼らの証言から、塁の得体のしれない力が、警察に調べられ、マスコニにも取り上げられてしまったのじゃ」

 ミッチーが、そのスサノオの話を、かいつまんで柴原葵に伝えると、葵は、

「あ、それって、少し前の市内熱田区の事件ね。夫の達夫がその少年を探したけど、まだ見つからない、ううん、確か、行方不明って話だったわ」

 その言葉が、スサノオに聞こえたのか否かは、よく分からなかったが、そこまで言うと、スサノオは何かを突然、思い出したように、その場で地団駄を踏んで、

「とにかく、一緒に、今すぐ、名古屋港の倉庫に行ってくれないか。そうしないと、塁は、国外に連れ出されてしまう。もう,時間がないんだ」

 と叫んだ。葵には、その声は聞こえていない。でも、それを聞いたミッチーは,

「ごめん、いきなり、そんなこと言われても」

 と口を濁した。

 そこで口を出したのが、陽葵だ。

「葵さん、スサノオさんが守護霊をしている男の子が、港の倉庫にいて、もうすぐ国外に連れ出されるんだって。スサノオさんは、それを救ってほしい、って言ってる」

 陽葵がそう言うと、部屋の奥から出て来たのは、柴原葵の夫・柴原達夫だった。

「それが行方不明になってる、足立塁君だね。よし、今すぐ、私の車で出よう。港だね。よし、警察にも連絡しておこう」

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