第5話、「陽葵、憧れの超能力者に出会う!」(4)
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時は少し流れ、新興宗教・道標教の、
年少者向けの10日間教団入門プログラム
も五日目の夜を迎えていた。夕食・入浴を終え、夏井陽葵、赤井舞の二人が部屋でくつろいでいると、
トントン
扉を叩く音がした。その音に、今やすっかり元気を取り戻した舞が、小走りに扉に行って、そこを開けると、
「あああ、陽葵ちゃんでしょ。会いたかった」
開けると同時に中に入って来た女性が、舞に抱き着いた。舞は戸惑っていたが、傍らにいた陽葵には、それが憬れの超能力者・柴原葵だと分かった。
「あの、夏井陽菜は私で、そちらは赤井舞ちゃんなんですけど」
陽葵が声をかけると、
「そう言えば、ここは二人部屋だったわね。ごめんなさい、どちらもかわいいから間違ってしまいました。あなたが陽葵ちゃんですね」
舞から離れた柴原が、陽葵に向き直って言った。
「はい」
陽葵が返事をすると、今度は陽葵に抱きつきながら、
「守護霊さんが見えるのは、あなたですね?」
と言った。少し考えて、陽葵が、
「はい、そうです」
と言うと、陽葵から離れた柴原は、今度は、陽葵の顔を見て、笑顔を浮かべながら、
「ほう、そうですか。だったら今、この舞ちゃんにも、彼女を見守る守護霊さんが見えますね。舞ちゃんの守護霊さんは、どんな方ですか?」
と聞いて来た。いきなりの質問に陽葵は少し戸惑ったが、陽葵が改めて舞を見ると、確かに舞の上に、あの看護婦さんが見える。看護婦さんは微かに微笑んでいるように見えた。
「見えるのは看護婦さんです」
と、陽葵が自信満々に答えると、今度は柴原は、少し真顔になって問いを返した。
「そうですか。看護婦さんがちゃんと見えるんですね。では、さらに質問、彼女の出身と名前は分かるかな?」
出身?名前?
意外な問いに、陽葵は一瞬、言葉を失ったが、何とか柴原の期待に応えたくて、
「ナイチンゲールさん?それとも、マザーテレサさん?かな」
と言うと、柴原は少しがっかりした顔をして、
「そうですか。ごめんなさいね。質問ばかりして。でも、そんな時は、自分で想像しないで、あなたの守護霊さんに尋ねてみてください。きっと、正解を教えてくれますよ」
柴原の言葉は、陽葵を驚かせるのに十分だった。自分の守護霊?守護霊に正解を教えてもらう?頭の中に考えを巡らせ、考え過ぎて陽葵がクラウラと目眩を覚えそうになった時、その声が響いた。
「彼女の名前は、松下ありささん。よく見て、日本の人だよ、幕末の頃に日本の医療に貢献したけど、道半ばで亡くなった女性さ」
それは、メアリーの声だった。




