第5話、「陽葵、憧れの超能力者に出会う!」(2)
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「あら、矢井田君、クビじゃないのね」
午後になり、夏井陽葵、赤井舞と一緒に学習室に現れた大谷珠代は、部屋の中にいる矢井田太郎に話しかけた。
「さっき、教祖に執務室に呼ばれて行ったら、高直師本人から謝罪を受けたよ。一応、合宿の統括責任者は古参の喜多朋広という人に変わったみたいだけど、高も研究員として教務部に残ったみだいだ」
矢井田が答えると、
「信じらんない。ここが宗教法人じゃなくて、普通の会社なら、絶対クビよ」
と大谷は言った。
「ところで舞ちゃん、調子はどう?一番心配なのが、舞ちゃんなんだから」
と、矢井田が今度は舞に問いかけると、
「うん、大丈夫」
舞は力なく答えたが、陽葵は舞の頭上の看護婦さんが俯かず、しっかり前を向いているのを見て、少し安心した。
「でも、十界論とか、四聖とか言われても、私には高先生が自分の行動の言い訳をしているようにしか、聞こえなかったな」
続いて大谷が切り出すと、矢井田は陽葵と舞にコンピュータ学習を始めるように導いてから、再び、大谷との話を続けた。
「だいたい十界がすべて、この世にあったら、死んだらどこに行くの?人間なんて認知症にでもなれば、自らの記憶さえ保てないのに、仏になんて本当になれるの?」
大谷がそう、愚痴っぽく言うと、そこから矢井田と大谷の話は熱が入り、かなり長く続いた。だが、陽葵は、コンピュータ学習をしていると、やがて、それに夢中になり周囲の音は聞こえなくなった。しかし、それとは逆に、大きな思いが徐々に頭の中から湧き出して来た。それは、
この大谷先生、矢井田先生の二人なら、守護霊が見えるという、自分の悩みを相談しても、真剣に聞いてくれるかもしれない。
という思いだった。
一度、そんな思いが心に宿ると、もうコンピュータ学習の声など耳に入らない。陽葵はヘッドホンをはずすと、その場に座ったまま、矢井田と大谷の方へと椅子を回転させた。
二人はまだ、会話を続けていたが、
「あれ、陽葵ちゃん、どうしたの?」
陽葵は、矢井田の視線が自分に注がれたのを確認すると、堰を切ったように話し始めた。
「大谷先生、矢井田先生、ぜひ、聞いてください。実は、私、みんなの頭の上とかに、別の顔が見えるんです。お母さんや、ここの部長さんには、それは私の脳が見せているウソだと言われたんですが、浜井先生はそれを守護霊?だって言うんです。一体、ホントは、どっちなんでしょう」
見れば、大谷も矢井田も陽葵の話に耳を傾けている。陽葵は一気に思いを続けた。
「私、浜井先生に、柴原葵さんという人も、同じものを見ていると教えてもらいました。ならば、葵さんに聞けば、ホントが分かるんでしょうか?だから、できれば、葵さんに会いたいと思うんですが、会うことはできるのですか?」




