第4話「陽葵に救いを求めたもの」(5)
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陽葵は愕然とした。まさか、いつもは舞の頭上にいる看護婦さんが、陽葵に近づいて来て、話しかけて来ることなど、考えてみなかったからだ。意を決して、陽葵が看護婦さんのうろたえた顔に向い、
「分かったよ」
と答えると、その声にメアリーの声が重なった。陽葵は、素早くベッドから飛び出すと、二人に近づき、高に叫んだ。
「やめて、舞をイジメないで」
突然、飛び出して来た陽葵を見て、高は少し驚いたような表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、
「陽葵ちゃん、何言っているの?私が舞ちゃんをイジメてるなんて。舞ちゃんを見てよ。僕がイジメてるように見える?」
舞を見ると、眠そうな細い目を開けて、陽葵を見ているだけで、イジメられているようには見えなかった。
「私は舞ちゃんと、ちょっと話をしたかっただけ。もう終わったから失礼するよ。陽葵ちゃん、起こしてしまって悪かったね」
そう言うと、高は部屋から出て行った。高の気配が完全に消えた後、陽葵は、
「ホントに大丈夫?」
と舞に聞いたが、舞は、
「うん」
と答えただけ。看護婦さんも、心配そうに舞を見つめるだけで、何も言わなかった。やがて、舞がベッドに消えると、陽葵もベッドに戻り、眠りに着いた。
翌日になって、陽葵は担任の大谷珠代に昨夜のことを話すと、大谷も舞に調子を尋ねたが、
「うん、大丈夫かな」
と、その日の舞は、怯えているというより、眠そうな感じだった。午前中、その日は、高のテキスト解説、続いて、
「小乗仏教、大乗仏教」
というタイトルのDVD鑑賞の後、昼食をすませ、陽葵は学習担当の矢井田太郎にも昨夜のことを話したが、矢井田も、
「分かったよ。陽葵ちゃん。でも、この後のことは、僕に任せて。陽葵ちゃんは危ないから、これ以上、この件には関わらないようにしよう」
といった反応だった。そして個別学習、ダンス授業、入浴、夕食と進み、再び、夜を迎えた。
そして、陽葵も、舞も一旦はベッドに入ったが、その日の深夜、時計が午後11時を回って、数分を過ぎた頃、陽葵は、突如、舞がベッドから起き上がり、パジャマのまま、部屋を出ようとしているのに気がついた。
ひょっとして、舞ちゃんは、操られている?
陽葵には、舞の様子が、そんな感じに見えた。
陽葵もベッドから出て、部屋の扉を開ける、すると、目の届く範囲に、ゆっくりと歩く舞の姿が目に入った。陽葵は、舞の後を追った。
舞は、そのまま、歩いて建物を出て、上履きのまま、外を歩いていく。陽葵はその時、裸足だったが、構わずに後を追った。
舞が向かったのは、合宿が行われている建物の隣り、
研究棟
と書かれた建物だった。研究棟のドアは、あらかじめ開いていて、舞がドアを入ると、
バタン
ドアは、すぐに閉じてしまった。




