第4話「陽葵に救いを求めたもの」(4)
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午後は矢井田太郎による学科のコンピュータ授業だった。夏井陽葵、赤井舞の二人が席に着くと、
「さて、それでは昨日の現状の学力診断プログラムの結果を伝えます。まずは、舞ちゃん」
矢井田の呼びかけに、舞は顔を上げたが、まだ顔は、心ここにあらず、という感じだった。矢井田が、言葉を続ける。
「舞ちゃんは優秀だね。主要教科はすべて小学校4年生の水準。特に国語の漢字の習得度は、小学生レベルを超えていると言っていい。ここで、そのまま学習を続ければ、有名私立中学への入学も可能だね」
舞は、それを聞くと、無言でパソコンに向かい、電源を入れた。引き続き、矢井田は陽葵に顔を向けた。
「陽葵ちゃんの場合は、そうだね、ほぼ小学校1年生レベルで、まあ、健全に学習が進んでいる、って感じかな。でも、算数などで、うっかりミスが多いみたいなので、焦らず、落ち着いて学習に取り組むべきだな」
それを聞くと、陽葵もパソコンの電源を入れ、自分の名前、パスワードなどを入力した。そして、画面に算数の問題が出て来て、それに取り組み始めたが、少しして、次第にウトウトとしながら問題を解いていたら、いきなり、パソコンの警告音が鳴り、画面に、
ねむいですか?
と表示され、驚いてしまった。
パソコンには、そんな児童の状態把握もあらかじめプログラムされている他、学習を始めて、ある程度の時間を経ると、
休憩タイム
というのがあり、その時間内はパソコン内のゲームをするのも、アニメを見るのも、パソコンを離れてトイレに行っても、椅子にもたれて仮眠を取るのも自由になっていて、そんな時間もはさんで、二人は午後5時近くまでの時間を過ごした。
その後は、
「さあ、今日は食事の時間まで、軽く運動をしますよ」
と大谷珠代が来て、向かったのは、壁に大きな鏡のある、板張り床の部屋。そこでダンスの衣装に着替え、大谷からダンスの基本を一通り習うと、その後に、夕食を迎えた。
運動をした後、食事をして、その後、お風呂にも入ると、もう陽葵も舞も、目を開けているのがおっくうなほどの眠気に襲われた。陽葵が、
「舞ちゃん、どう、もう大丈夫?」
と聞くと、舞は、
「うん、大丈夫。もう寝るね」
と言ってベッドへ。陽葵も、自分のベッドに行って横になると、そのまま、あっという間に眠りに入った。
それから、どれくらい時間が過ぎたのか。陽葵の頭の中の声=メアリーの声や、それに交じって、何か低い男の人の声が聞こえ、陽葵はそこで、目を開いた。そして寝返りをして、舞の方を見ると、そこにいたのは、向かい合わせに椅子に座る、舞と、そして高直師だった。
陽葵は、すぐに起きようとしたが、その瞬間、恐怖感に包まれ、体が動かない。高と舞の様子を見ると、椅子に座った舞は目を閉じていて、その目を閉じた舞に向い、高は何かを熱心に語りかけている。
どうしよう?
陽葵が、そう思った時だ。突然、目の前に、人が現れた。看護婦さん!?_それは、いつも、舞の頭の上にいる、あの看護婦さんだった、何故か、看護婦さんが、すぐ前にいる。さらに、その看護婦さんが、確かに陽葵に向って、言葉を発した。
「舞を、舞を、助けてください」




