第4話「陽葵に救いを求めたもの」(1)
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夏井陽葵と赤井舞は、二人部屋だった。部屋に入ると、部屋は左右に分かれ、ベッドと机が左右対称に配置されていた。
「こっちが夏井さん、こちらが赤井さん。ちょっと早いけど、夕食まで、ゆっくりしててね、。食事の時間になったら、また来るね」
担任の大谷珠代は、そう言うと、二人を部屋の中に入れ、外からドアを閉めた。陽葵が舞を見ると、舞はフラフラとベッドの方に歩いて行き、そのまま横になった。
「びっくりした」
舞が漏らしたのは、その一言だった。陽葵は、舞に近づくと、ベッドの傍らから声をかけた。
「大丈夫、舞ちゃん。私もビックリした。でも、もう大丈夫だよ。あの基さんも、もう落ち着いたみたいだし」
すると舞は、
「ウン」
とだけ答えたが、目に正気はなく、陽葵が舞の少し上に浮かぶ看護婦さんに目を向けると、彼女も俯いたままだった。
陽葵は、
「そうだ、舞ちゃん。運が良くなる魔法を、お父さんに教えてもらったの。一緒にやってみない。ねえ、やろうよ」
陽葵はそう言うと、寝ている舞の腕を持ち、半分無理矢理に、舞をベッドに座らせた。座った舞が、視線を陽葵に向けると、
「いい、舞ちゃん。私と同じようにするのよ。まずは。ほら、上を向いて」
そう言うと、陽葵は全力で天上を見つめた。少し戸惑ったが、舞も顔を上に向ける。
「いいわね。なら、次は、これよ。いくよ」
パン!
陽葵は、そう言うと、今度は手を叩いた。舞がその音で、再び、陽葵を見ると、陽葵は、両手を広げて、舞にも手を叩くことを促す。
パン
しばらくの時間の後、仕方なく舞も手を叩くと、
「どう?舞ちゃん、運が良くなって、元気が出たでしょう」
陽葵が待ちかねたように声を掛けた。
舞は、それから、しばらく考え込んでいたが、やがて笑いだした。
「フフフ。陽葵ちゃん、今から何をするのかと思ったら、これだけなんだ。たった、これだけか」
舞は、そう言いながらも、不思議に元気が戻って来るのを感じた。
そこへ、
「おい、君たち、大丈夫だったか。今、大谷先生から話は聞いたけど」
そう言って部屋に飛び込んで来たのは、二人の学習担当、矢井田太郎だった。




