第3話「陽葵が見つけた友達」(4)
4
「僕が君たち二人の学習担当、矢井田太郎です。ここでは、ここに通ってる児童の学習が遅れないよう、学校の勉強の補完を行います」
午後になって、夏井陽葵と赤井舞は数台のパソコンが置かれた部屋に、担任の大谷珠代と共に入った。矢井田が二人に挨拶すると、大谷が口をはさんだ。
「この矢井田君、若いでしょ。まだ大学生なんだよね。でも家庭教師の世界ではプロと言われた実力の持ち主なんだよね」
すると矢井田の固い表情が一気に緩んだ。
「大谷先生、やめてください。確かにこれまで家庭教師はいっぱいやりましたが、ここで児童が取り組むのは、なでしこ学習アプリという、チュン博士が開発した、セルフ学習システムですよ。僕が高校生の時にこのシステムがあれば、僕も大名古屋大学じゃなく、帝国大学に行けた気がします」
それを聞くと、大谷は、
「そんなに、すごいの」
と改めてパソコンが並んだ部屋を見回した。矢井田が言葉を続けた。
「そこで今日はまず、君たちの実力を測らせてもらいます。それで例えば、国語の実力が小学生に満たなければ、国語学習は幼稚園レベルから、算数が小学3年生レベルなら、算数はそこから。本日の診断結果で出て来た、あなたたち各自の実力に合わせた、効果的な学習が、次回から進められます。もし、分からないことがあれば、ここには僕か、大谷先生のどちらかが常に在籍してますから、気軽に聞いてください」
「パソコンの細かい操作とかは、私より、矢井田君の方が詳しいので、矢井田君にお願いします」
大谷が口をはさんだ。再び、矢井田が説明を続けた。
「それでは、それぞれ、パソコンの前に座ってください。Enterを押すと、問題が始まります。問題量は、かなりありますので、ゆっくりやっても、途中で休んでもいいです。今日一日で終らなくても、何の問題もありませんので、気軽に取り組んでください」
トン!
二人が、ほぼ同時にEnterキーを押すと、
小学生低学年向き学力診断プログラム
が始まった。
ピコカタカタ
ピコカタカタ
教室には、しばらくの間、パソコンのキーボードの音が響いていた。最初はカタカタと早い速度で響いていた、キーボードの音が、やがて、少しゆっくりになった頃、
「うお~、わお~」
部屋の外、どこからか、唸り声のような音?声が聞こえて来た。
うお~、ガタン!
ワオ~、ドタン
その音?声は、ドアや壁にぶつかっているのか。大きな物音も響かせながら、だんだんと近づいて来る。
さすがにそこで、二人のキーボードの音が止まった。




