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陽葵の見えるもの  作者: チュン


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第3話「陽葵が見つけた友達」(2)

 父兄も先生もいなくなった部屋に、児童7人だけが立っていると、そこに一人の女性が入って来た。胸に名札があり、そこには、

教務担当、深沢瑞穂ふかざわみずほ

 と書いてあった。

「さあ、みなさん、教室に移動します。私の後に、ついて来てください」

 深沢に案内されたのは、30人くらいが利用できる、学校の教室と似たような部屋だった。

「みんな、各自、好きな場所に座ってください」

 と言われ、陽葵が座ったのは、前後左右、どこからも真ん中くらいの席だった。ただ、気になったのは、あらかじめ教壇に、高直師が立っていたことだ。全員が座ると、高直師が口を開いた。

「ようこそ、道標教入門プログラムへ。先ほど挨拶したが、私は高直師、このプログラムの統括責任者です。明日から、みなさんには、午前中4時限、ここで宗教の勉強をしてもらいます。最初の2時限は総合学習として私が、その後の2時限は、小学生と中学生に分かれた個別学習で、中学生は私が、小学生は、こちらの深沢瑞穂先生が担当します。ただ単に本を読むだけでなく、VTR学習や、体験学習なども行う、創意あふれる授業ですので、みなさん、楽しみにしていてください」

 児童は私語もなく、黙って高の話を聞いていた。

「さて、今回は初めてということなので、まずは、一人ひとりに簡単な自己紹介をしてもらいましょう。それぞれ、名前と学年、プログラムへの参加回数、今回のプログラムでしたいこと、この4つを言ってもらいます。まずは年長順で、もとい君から、行きますか」

 高に促され立ち上がったのは、先ほど陽葵の目に入った、背の高い少年だった。

基樹もといいつき、中学校3年。このプログラムは今回で、何回目かな、8回目くらいかな。プログラムの目的は、今度こそ、宗教的確信を得ること、だな」

 そう言うと、基は席に座った。高が目で合図を送り、次の男子が立った。

「僕は、高橋文博と言います。一応、中学校1年生ですが、まだ学校へは行ったことがありません。親に、学校に行かないのなら、ここに出ろ、って言われて・・・。参加は初めてです」

 高の目配せが、次々と児童に向けられる。

「能戸敏孝。小学3年生。家にいても、ゲームばかりしてるので、もう一度、この合宿に出ろって言われた。2回目です」

「須藤美月、小学6年生、3回目です。学校とかと違って、ここなら十日で終るから、いいかなって思って」

 ここまでの児童はいずれも、動作も散漫で落ち着きのない様子だったが、次に順番が来た女の子は、一人、異色で、自信満々に元気よく立ち上がった。

「石崎恵、小学4年生。2回目です。前回の合宿で、宗教の素晴らしさを知って、もっと知りたいと思いました」

 陽葵の番が来た。陽葵は自信無げに、ゆっくり立ち上がった。

「夏井陽菜、1年生。初めてです。私もお母さんに言われ、宗教の素晴らしさをもっと知りたいと思って、かな」

 頭が真っ白になった陽葵が、そう言うと、

「真似すんな」

 石崎が叫んだ。石崎の言葉に、陽葵はあわてて俯いた。石崎は、陽葵が自分の言葉の一部をパクったのを怒っているのか、その時、教室に一瞬、変な雰囲気が流れた。陽葵は、時間と共に、居心地の悪さを感じた。

 ところが、

「赤井舞。1年生。私も宗教の素晴らしさ、知りたいです」

 最後の一人、赤井恵の言葉で、教室の全体の雰囲気が一気に和んだ。石崎も呆れたのか、何も言わなかった。

すごい。

 陽葵は、それに驚き、思わず赤井舞を見つめずにはいられなかった。

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