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陽葵の見えるもの  作者: チュン


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第2話「陽葵もフロイトを見た」(5)、母の提案

「あの先生、悪い人じゃないけれど、今のところ、特に問題はありません、次の予約は3か月も先って、どういうこと?こっちは、問題があるから、来てるって言うのに」

 車に乗ると、母親は運転をしながら、一人しゃべりを始めた。どうやら、母親は、その日の浜井徹への訪問に満足してはいないようだ。

「それで今日は、どんなお話があったの?」

 不意に母親から質問が飛んだ。陽葵は、その問いに即、答えようとしたが、躊躇した。ここで陽葵は、母親の浜井に対するマイナスの感情を、何とか抑えようと思ったのだ。しばらく考えた末、陽葵は、

「今日は先生に、絵を見せてもらったかな」

 と思わせぶりに言った。すると母親は、

「絵?何の絵?あそこは絵画教室じゃないから、心理学か何かの絵かしら?」

 陽葵は、母親の予想以上の引っ掛かりに、少し慌て、

「超能力の人の絵だったかな。ちば・・・あおい・・・さん?」

 というと、母親は嬉々として叫んだ。

「もしかして、超能力者の柴原葵さん?柴原さんって言えば、今、科学と宗教の融合を唱えられている、現道標教・足利信満教祖のアンバザダーをされる人なのよ」

「アンバサ・・・?」

 母親の言葉が理解できなかった陽葵は、オウム返しで、それだけ言った。

「この前の高先生もそうだけど、今の道標教には、すごい人が何人もいるの。中でも、道標教開祖・足利道教様を引き継いだ、信満様の拡張政策は素晴らしくて、地方宗教だった道標教を、全国区にしたのも信満様、宗教界を超え、政財界とのパイプを作ったも信満様。来年には道標教初のテレビ番組が始まることになっていて、その番組のアンバサダーとして、レギュラー出演者が決まったのが、柴崎葵さんと、そのご主人・柴崎達夫教授ご夫妻なのよ」

 何故か、その時、陽葵に、その柴崎葵さんに会いたいようね、不思議な感覚が芽生えた。

「それで陽葵は、柴崎葵さんの絵を見て、どう思ったの?」

「すごいと思った。うれしかった」

 陽葵は即答だった。母親は、そんな陽葵を様子を見て、言った。 

「あ、そうそう、その番組は教団のスタジオでも撮影するみたいだから、ひょっとして教団に顔を出してたら、柴崎夫妻に会えるかもしれないよ」

「・・・ホ、ホント!?]

 母親の言葉は、嘘ではないが、それに近いものだった。何故なら、母親は頻繁に教団を訪れているが、まだ一度も教団内で夫妻を見かけたことなどなかったからだ。

 だが、母親はここで、意を決して、言い放った。

「やっぱり、3カ月も待てないよね。陽葵、あなたは高師匠がおっしゃった、10日間プログラムに行って来なさい。無理に症状を治すのではなく、今、ここで正しい宗教規範を学ぶことこそが、あなたの将来のためになると思うから。そしたら、あなたが柴崎葵さんの絵に興味を持ったことも、ちゃんと高師匠に伝えておくから」

 その時、それを否定するような、頭の中の声が聞こえる気がして、心配したが、声は聞こえなかった。陽葵は、少しほっとしたような気分になった。

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