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【短編】男と犬

作者: 雷電鉄

 雨の中、 男が足早に歩いていた。

 雨が傘をはみ出し、 服を濡らすのも構わずに。

 どこか、その姿は家族とはぐれてさ迷う子供のようにも見えた。


 やがて、 男は河川敷へとたどり着いた。

 何かを探すように川岸を降りていき、 橋の下へと向かっていく。

 そこには、 1匹の犬の座る段ボール箱があった。


 箱を見つけると、 男は傘を放り出して犬の元に駆けていった。

 それを見て、 犬も箱を飛び出して男の元に走っていく。


「捨てたりしてごめん。 もう、 二度とお前を離したりしないよ……」


 その言葉に呼応するように、 犬も尻尾を振りながら男にしがみつく。


 

 ややあって、 1人と1匹が抱き合う光景は少しづつ消えていき、 視界は暗転していった。


 *

 *

 *


「これくらいでいいだろう」


 そう言うと、 男はスイッチを切った。

 それと同時に、 何本ものコードが繋がれた機器の前部の扉が開いていく。


「まったく、 安易にペットを捨てる飼い主にも困ったもんだな」

「本当になあ。 これじゃあ生類憐れみの令の時代に逆戻りだよ」

「おっと、 言葉には気を付けろよ。 保護団体の耳に入ったりしたら厄介だぞ。 連中が()()()()を作らせたから、 俺たちも仕事にありつけてるんだからな」


 2人の作業員の視線の先には、 ゴーグルを着けた1匹の()が座っていた。


 20××年。 少子化に歯止めが掛からなくなっていた日本では、 その隙間を埋めるように爆発的なペットブームが到来していたが、 それとともに安易なペットの遺棄も重大な社会問題になっていた。

 これは、 捨てられたペットの心を癒すために開発された精神再生用マシン。


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