39. 想いを口に② ※ 貴也視点
精一杯の紳士を発揮して、三上さんの手を引き、一緒のベッドに入った。
抱きしめて眠るだけで切なくなってしまって……実は結構辛い。でも、
そっと覗き込めば、俺の腕の中で安心して眠る彼女の寝顔が堪らなくて、幸せで緩む頬を誤魔化せない。
そんな事を一人繰り返しては、にやつく時間を噛み締める。
……少しだけ、カッコつけなきゃ良かった。っていう気持ちがあるけど、流石に「この状況じゃなあ」という思いの方が強かった。
何のわだかまりも無く、俺だけ見て欲しい。
というか、元カレなんてさっさと忘れて欲しいから。
そっと、ずっと大好きだった人の頬を撫でる。
(一途なのは三上さんの方だ……)
日向を三上さんの心から追い出すのは大変だろうと踏んでいた。そもそも他所の女を好きだと知ってる奴を、その上で恋してしまった人だから……
本当は、その相手と浮気してたって話を聞いても、許してしまうのでは無いかと思っていた。
だから、言えなかったし、言わなかった。
日向をもっと好きになる彼女を、見たくなかったから。けど、
(考えすぎだったかな……)
そこまで盲目じゃなかったんだな。
というのは、今日の彼女を見て確信し、同時に安堵した話。
三上さんは、二股を掛けていた日向を普通に軽蔑していたし、自分を蔑ろにしてまで惚れ込んでいた相手を、あっさりと捨てて鞍替えしようとした日向の行動に、失望していた。
彼女が見ていたのは、あくまでも「彼女が恋した日向」で、それは存外崇高なものだったのかもしれない。
それでももし彼女があんな日向を受け入れたなら、自分はどうしていただろう。強引に無理矢理、迫ったんだろうか……
(分からない──)
ただもう今は、どうでもいいとも思う。
今はもう、やっと芽吹いたこの花を、大切に大切に育てたいのだ。
そっと頬に唇を落とす。
すやすやと眠る彼女の寝顔にどきどきと高鳴る胸が十代の学生の頃のようで……
(眠れない……)
多分今日は嬉し過ぎて眠れない。
でも何度も見た夢じゃ無い。間違いなくこれは現実で……
きつく目を閉じ、腕に抱いた愛しい人をもう一度強く、抱きしめた。




