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12. っはああああ!?


「良かったじゃん、すぐにふっきれそうで」

 その言葉に私はむすりと口元を引き結ぶ。


「……良くないよ、男性不信になった」

「それは、確かに良くはないけど……見る目が無かっんだからしょうがないんじゃない?」


「っはああああ!?」


 駅に向かう道すがら、私が張り上げた声に振り返る人もチラホラ。河村君も目を丸くしている。が──

 え? いや言う? 普通そんな事??

 目を丸くしている河村君の方がおかしいよ!


「え、いや……見る目、無かったよね?」

「駄目押し?! ねえ、こう言う時は『そんな事無いよ、もっと良い出会いが〜』っていう言葉を掛けてくれるものなんじゃないの!?」

「……三上さん盲目だから自分の感性で突っ走るの止めた方がいいと思う」

「えええー!?」


 失恋した上に感性ダメ出しされるとは思わなかったんだけど……こういう時は労って貰えるもんだ、というのは私の認識が甘いからなのだろうか……?? いやいや、


「か、河村君は意地悪だと思うよ!」


 びしりと指を突き付けて性格を非難させて頂きます。


「……まあ自覚はあるけど」


 あるんかい!

 てかなんで私はそんな人にダメ出しされてるんだろう!?


「まあでも、これからは俺が近くで教えてあげるから。何も心配いらないよ」


 ん?

 ぴたりと動きを止めて、いつものにこにこ顔に戻った河村君に発言の意図を問う。


「……教えるって何を?」

「変な男に引っかからないように、世話してあげるから心配しなくていいよ。乗りかかった船ってやつ」

「そ、そんな事は別に……」


 頼んでない、けど……

 目を泳がせつつも、思うところがあり、内心唸る。

 とはいえ、だ。

 もしかしたら有り難い話なのかも……しれない。


 言いかけた言葉を飲み込む。

 河村君はモテてるし、恋愛話の実体験や相談件数は他の追随を許さない程多いのでは?

 ふむむ。


 確かに暫く誰かと付き合うなんて怖くて出来ない。けど、これを理由に私が一生卑屈になる必要なんて無いのだ。だから……


「……ありがと」


 先を見越して、お願いしておこう。


 うん私、現金だなあ……なんて思いつつ。

 まあいいか。

 好きな人が出来るなんて、きっと当分無い。その頃には河村君とこんな距離感で話す事も無いでしょう。


 どうしても悩んだり迷ったりしたら、その時だけ相談させてもらおう。

 今はそんな存在が出来たってだけで心強い。


 チラリと河村君を見ると、意外な事に少し顔を赤らめたりしているので、もしかして勢いで言った科白に後悔してるのかなー? なんて首を傾げる。

 心配しなくてもこれを機に依存、なんてしませんよ?


「どういたしまして……じゃあ……」


 けれどそその言葉と共にするりとお互いの掌が合わさり、今度は私の方が目を丸くする。


「いい男ってのがどういう奴か教えてあげる」

「……っ」


 口を開けたまま固まってしまったのは許して欲しい。


 だって声も出なかった。

 だってだって河村君が言うと何と言うか……様になってしまって突っ込みどころも無かったのだ。


 ぱくぱくと口を開閉してなんとか呼吸を整えていると、手はそのままに、河村君と私はそのまま駅まで歩き出したのでした。


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