プロローグ
あかりの大好きなゲーム『サイド レストアラー』を制作した公式アカウントが、とんでもない内容を呟いた。
主人公のデザインの「御守り」を限定一名様にプレゼントします。
会社ではなく、個人や少人数のチームで作られたいわゆるインディーゲームと呼ばれるジャンル。あるゲーム機でダウンロード専用に配信されたソフトが、RPG好きの間で一定の人気を獲得した。
プレイヤーの分身となる名無しの主人公が、家庭の事情により東京の親戚の元へ越してくるところから物語は始まる。
主人公は学校に通いながら、時間の停滞と呼ばれる不可思議な現象に遭遇し、反転世界を闊歩する凶悪な異形という敵を元の世界へ送り還す力を持つ者・送還術師として覚醒することに。
次々と襲いくる異形と、その裏に見え隠れする謎の影。仲間と共に進む主人公達を待つのはーーと大まかに言えばこんな内容だ。
斎川あかりはこのゲームにどハマりした。
さらに言えば主人公に恋をしている。
名前はプレイヤーが自由に決められるけれど、外見は黒髪無表情イケメンの固定である。
まずその見た目がストライクだった。
最初はぱっとしないのだが、日常パートで人間力パラメータを上げると人として磨きがかかる。そのパラメータの高さは仲良くなれる相手ーーリンク相手と絆を深める時に関係し、段階を踏んでいけば戦闘パートに有用なスキルを手に入れることができるという仕様だ。
プレイヤーの分身というだけあって選択肢を選ぶ以外は基本無口。さらに選択肢もお遊びのものもあって性格は掴みにくい。
けれど大切なことを見失わない強さと、辛い境遇にも関わらず他人を思いやれる優しさを持っていて、本当に素敵な主人公なのだ。
あかりは気がつけば、ぱっと見の印象で夜永静と名付けた彼を見て、胸を高鳴らせるようにまでなってしまった。
学校の友達に好きな人がいないのか聞かれて答えるのも静だ。
詳しく話しても呆れられたことしかない。それは仕方ないとわかっている。
しかし友達がする恋の感情と、あかりのしている恋の感情は似通っていると自覚していた。
ちなみにリンク相手が女性であれば、お付き合いをすることも可能だし、なんなら複数人と恋人になることもできる。
あかりは大抵一人の相手と付き合っていたのでクズ主人公を見たことはない。見る予定もない。
そんなあかりは当然SNSでハッシュタグを付けて応募した。当選者にはお互いがフォローをしている時にだけ使えるダイレクトメールで連絡が来るようだ。
どうか当たりますようにと、祈りながら眠った。
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