最終章へ〜決戦の時
田島――――
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次の日、2枚の書類を見比べながら田島は溜め息を付いていた。
「次の犠牲者はあの奥田千夏さんと近藤明史さん…晶仁さんの父か…」
不幸中の幸いか、田島と共に警視総監もその非現実を目撃したため、一連の死者、
伊藤早苗
高橋香織
奥田千夏
近藤明史
は変死として扱われる事になった。
もしもこれ以上の死者がでた場合も、それは全て変死として扱われるらしい
それにしても…田島としては辛い限りだった。目の前で人が惨殺されていくのを、ただ見ているしか出来ないのだ
「くそっ!」
机を殴りつけ、血の滲んだ自分の拳を見つめる田島。
2人の葬儀の時、これ以上被害者を出さないと誓ったはずなのに…
田島はもう一度、先程よりも強く、机を殴りつけた
次の日の午後。
明史の通夜が身内内でひっそりと行われていた。
父の遺影をじっと見詰める晶仁に、田島はゆっくりと近付き、肩に手を置いた。
外へ連れだし、
「こんな時に申し訳ないが…」と話を切り出した。
ミカが二人を心配そうに見詰めている
「上から、貴方のお父様は変死として扱う許可がおりた。
先に亡くなられた彼女達も…
だから、もう殺人犯は誰か、という話はしなくていい
だが、私としてはもう被害者をだしたくないんだ。
昨日、力のある霊能力者に約束を取り付けて来たんだが…お祓いを受けてみないか?」
静かに耳を傾けていた晶仁は、ゆっくりと首を振る
「わざわざ…それはありがとうございます
ですが、父はこの世界で最も力が強いと言われていたので、恐らくその霊能力者には無理でしょう。
出来るとしたら、この私くらいでしょうね…」
田島はその言葉に肩を落としたが、「貴方は明史さんの息子ですからね…
何か手伝える事は無いですか?」
と聞いた
無言で首を振る晶仁に、
「私はあなた方の味方だ。困った事があれば、いつでも」
と言い置き、田島は去って行った。
晶仁は、やはり自分がやらなければならないのか…と覚悟を決めた。
※
田島と話したあと、しばらく立ち尽くしていた晶仁。
あたしは晶仁に近付き、はっきりと断言した。
「晶仁なら大丈夫だよ」
と。
晶仁は力無く笑って、あたしをそっと、でも力強く、抱きしめてくれた。
※
次の日の朝、俺はミカと庸平と田島さんを呼び、ある計画を話した。
それは偽りの計画だったが、本当の事を言うと、きっと彼女達は止めるだろうし、何よりも俺の覚悟が揺らいでしまう。
その計画は、明日の夜、晶仁の実家で行われる。
今の俺は、
ミカのためなら命など惜しくない。
そして、当日。
『あきちゃん』は準備を整え終えていた
『待っててね、ミカ…』
※
一方の晶仁達も、明史の時と同じように、まだ血の生臭さの残った白い部屋で、準備を整えていた
だが、明史の時とは違い、巫も藁人形もいない。
ミカ達はそれが気になったが、言われた通り正座し、晶仁の指示を仰いでいる。
全ての準備を整えた晶仁は、あきちゃんの襲来を待っている