憑依
署内の取り調べ室―――
―
庸平の時と同じ警官がドアの前に立っている。
晶仁達3人は田島が戻って来るのを待っていた。
「お待たせしました。では、もう少し立ち入った話をお聞かせ願いたい。」
戻ってきた田島がそういって、三人に向かい合った
「まず、近藤さん
貴方の家は
「峯引寺」という人形供養のお寺だそうで?
これは完全に私の興味からですが、その時も霊的な現象が起こったと渡辺さんが言っていましたが―」
「えぇ、峯引寺で庸平と私以外の全員が私の父からお祓いを受け、それから私とミカ以外が庸平のお見舞いに行きました。
そして私とミカは、親父の助言で離れにある暴走した人形達から逃れる為の部屋に避難したんです
彼女がミカを取り戻そうとやって来るのが分かってましたから。
そして何分か後に、部屋が揺れ始めた。案の定、『あきちゃん』が寺中の人形を引き連れ、ミカを取り返しに来たんです。
2時間くらい続きましたが、やがて諦め帰って行きました。
それから……」
晶仁が俯いてしまった。代わりに、ミカが話す。
「それから、私と晶仁は両想いである事に気付き、早苗に抱き合って口づけを交わすのを見られてしまったんです。
早苗が飛び出して行き、そのすぐ後に貴方がやってきました」
千夏は驚いて二人を見たが、やがて顔を下に戻した
「そうでしたか…晶仁さんにとっては辛いことだったでしょう…」
『ふざけるな…』
田島、ミカ、晶仁の三人は驚いて千夏の方を見た。
千夏は白目を剥いて、ミカの首を絞めようとしている。
『返せぇ…返せぇ…晶仁を…』
「やめなさい!君!!」
佐藤と田島と晶仁がミカの首を絞める千夏を引き剥がす。『離せ…離せ!』
暴れる千夏。凄い力だ…
「臨兵闘者皆陳裂在前 臨兵闘者皆陳裂在前」
晶仁が念仏を唱える。やがて動か無くなった千夏は、ガックリと田島と佐藤に抱えられた。
ふう…と脱力する4人。
「大丈夫か?」
晶仁は優しくミカに聞く
「うん…早苗ちゃん…」
「………」
晶仁の頬を涙が伝う
今のは、伊藤早苗が?
「もはや私達の手に負える物では無いようだ…しかし…信じられない…」
今しがた起きた憑依を見て、田島と佐藤は驚きを隠せないでいる。あと晶仁の霊力にも
その後、晶仁の実家で早苗の霊を供養しようとしたが、もう既に『あきちゃん』が早苗の霊を取り込んでしまっていたようだ。『あきちゃん』はどんどん残虐になってゆく。