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怨念


人形…


想いを持つ人型のもの


それはあたしを


恐怖へと引きずり込んでゆく


二人きりの暗い世界へ…






ミカ―――


あたしは今日から地方の大学に入学するため、一人暮らしを始める…

というのは表向きの理由で、家に男を自由に出入りさせたいというただの両親払い。



引っ越しの前夜。


「ねえ、これ」


混沌とした押し入れの中からミカがつまみ上げたのは膝丈くらいの日本人形。おかっぱ頭に幼く白い顔。


ミカの声に母親がやってきた。

「まぁ、懐かしいわねぇ…

ミカちゃん、覚えてないの?

あなたいつも大事に抱いて眠ってたじゃない、中学生になるまで」


「うん…」


忘れるはずがない…いや、見るまでは確かに忘れていたが。それに…

中学生になるまでじゃないよ

ミカは中学校でいじめられていて、その度に『あきちゃん』と名付けた人形に泣き付いていたのを思い出す。鈍く光る人形の目を見て、当時の自分を思い出すようで、嫌悪感を抱いた


「もう捨てといてよ」


そういった瞬間、人形の目が輝きを増し、顔の表情が変わったのをミカは気付かずにいた。






―アパート、302号室


ふう…

ベッドや箪笥、机など日常生活に必要な物を全て運び入れ、一息付く。

あとは3つの段ボールにそれぞれ入った小物を取出すだけ。




「疲れた〜

この段ボールで最後ね…」


三つ目の段ボールを開けた時、ミカの目は大きく見開かれた。


「あき…ちゃん?」


化粧品やシャンプー、タオルと共に静かに座る日本人形。

ミカはすぐに実家に電話をかけた


「…嘘…お母さんじゃないの?……うん…わかった…」


お母さんが入れたのかなと思っていた人形…身動きもせず一点を見つめる人形に思わず寒気が走る


うざい

きもい

死ね


中学校の頃の大人しく眼鏡をかけた自分が殴られたり蹴られたりしている姿が次々脳裏に浮かび、ミカはそれを掻き消すように、乱暴に掴んだ『あきちゃん』を窓へと放り投げた


グキッ…


まるで骨が折れたような音がして、恐る恐る窓から下を見下ろすと、首や手が不自然に曲がった状態で、『あきちゃん』は私を見上げていた


「怖い…」


そろそろ日が落ちる。ミカは窓とカーテンを閉め、電気をつけたまま眠りについた







その頃、『あきちゃん』は静かに首を持ち上げ、痛みを微塵も感じさせない無表情で、アパートへと入っていく

カン……カン……カン…

両足で跳ねながら、『自宅』へと向かっていた


302号室へ…







次の日。起きたあたしは何かを抱きながら眠っていたことに気付いた。そしてその腕の中にあるのは、昨日窓から捨てたはずの、手と首の折れた『あきちゃん』であった







大学で―――



高校からの友達、香織に今朝の話をしてみた。もちろん、中学校時代の話は伏せて。


「ええ〜ちょ〜キモいじゃん。燃やしちゃいなよそんなの」

面白そうに笑う香織にはイラッとくるが、


『だよねだよね〜

なんなら今日みんなおいでよ、あたしんち!うちってば今一人暮らしだかんね〜』


とピースをしてみる

こんなことで怒って、やっと築き上げてきた地位を捨てる訳にはいかない。


結局香織を含む高校からの女友達3人と、大学で知り合ったちょっとイケてる二人の男子でミカの家に行く事になった

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