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花鳥風月  作者: 三千
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前進

惑星リアキアが甦っていく。それが手に取るようにわかるようになってくる。


見える範囲ではあるが樹々は広く広く生い茂り、鳥たちはここそこでチヨチヨと囀り、花は狂ったように咲き乱れて種を放出し、空気や川の水も澄んで清流と化した。


タクトはここ数日、外に飛び出しては大きな口を開けて深呼吸する。肺に美味しく綺麗な空気を送り込むと、生きているという実感すら湧いてくるのだ。


そう。


これからも生きていこう。


ちゃんと、そう思えるのだ。


(不思議なことだが、まあ健全な魂は健全な肉体に宿る、ってやつだな)


もちろん、健全な肉体とは、このリアキア自体に拠る。


翻って、足元に目をやる。


ハナの能力によって、あちこちに芽吹きを見ることができる。


フウによって創り出された風は、タクトの髪を揺らす。


そして、トリや自分のうかがい知らぬところで、生命が生み出されては育まれ、そして。


極めつけはツキの創り出した重力によって、人は大地に足をつけ、愛し合うのだろう。


(さあ、俺の番だ)


タクトが、心を決める。


優しく、トントンと肩を揺らして、人類を起こす時が来たのだ。


————たとえそれが、リアキアの破滅への始まりだとしても。


(花鳥風月のお陰で、思ったより早く……忍さん、ようやく……ようやく、あなたを起こせる日が来たよ)


タクトは青く澄んだ空を見上げてみた。こうして防護服を着ず、平気で外界を自由気ままに散策できる日が来るとはと、心底から『花鳥風月』への驚きと、この大自然の自浄力への畏敬の念は増す一方だ。


(会長との約束を果たせる時が来た……)


タクトは心を決めると、ハルが待つ管理棟へと向かった。エントランスへと進み、開いた自動ドアへと進む。

新しい世界への道だ。


軽い興奮とともに、タクトは足取り軽く、歩いていった。


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