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文化祭  作者: NK
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黒-3

この頃よく、あの日々を思い出す。

何が起こるかわからないような毎日で、きらきらしていた日々。

とても愛しくて大事な彼女が、毎日視界に入る距離にいた日々。

過去を振り返っている間は、今を生きている感覚がしない。

今に目的も楽しさも見出せなくて、所在がないから過去に逃げる。

過去を上塗りする今がどこにあるのかわからない。

今に居場所を見つければ、今が楽しくなれば、

過去なんてどうでもよくなるって 自分が一番よく知っている。

だから、過去を振り返る時は

自己否定とか自己嫌悪といつも一緒にいる。

ただでさえもう変わることなんてないとわかっていながら過去をなぞるのはつらいのに、

さらにそこで自分を傷つけるのは、本当に死んでしまいそうな作業だ。

でもそうすることに依存するしかできない自分がいるのだ。

それはひどく気の滅入る話で、

今にもその先にも、期待なんてしなくなる。

そうやって、自分を守っているのだ。

あまりにも不器用で、後ろ向きの自己防衛の手段なのだ。



今日は天気がいい。とてもきれいな秋晴れだ。

天気も月も景色も、良ければ良いほど心におもりが乗ったみたいになるけど、

今日は少し、あの日を思い出してみたい。








―――――――――――――――――――――――――――――――――



ぼっちに文化祭はつらい。

居場所がない。

毎日の学校なら、一応自分の教室には自分の机と椅子がある。

自分の所有場所。

何がどうなっても、誰がどこにいても、そこだけは必ず自分の場所。

ずっといても不思議がられない、強固な城。

そこから追い出されてしまう。

身の置き場のない、あの居心地の悪さ。

上がっていく場のテンションと自分の対比。

一生懸命に人のいない場所を探していた。

息をひそめて、存在を隠し通せる場所を探していた。

それを、二年間続けた。

そして三年目。見える景色が180°変わった。

見える景色がきらきらしていた。

聞こえる音が明るかった。

そしてそこに、彼女がいた。

背中に触れた指先、

向けられた笑顔、

照れた声、

予想を超えた展開。

何もかもが奇跡みたいに 絶え間なく自分に降り注いで、

まるで自分が自分じゃないみたいに、

今となっては夢みたいな幻。

あの瞬間は、ふたりの共有した時間は、

いったいどこに溶けたのだろう。

彼女は思い出すだろうか。

自分は忘れられるだろうか。


きらきらしたあの一日を、

今日の青空にゆっくり透かして、

彼女が今頃笑っていますようにと その幸せを願う。

そうやって日々をゆっくり歩いていこう。

自分が生きていることの意味も理由も

その先できっと見つかるから。


後づけだって、そうして今まで自分は生きてきた。

そして必ず 見つけてこられたのだから。




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