61 まずは食い物の確保から
あと国土復興の仕事に従事する人たちに、衣食住を提供する必要がある。
これは結構大変だった。
まず食料の安定供給。
弟が米国で生鮮食品の日本への輸出をしていることを思い出し、さっそく連絡した。
しかし、ここ数年の俺の所業でそんなに大量に、信用して送ってくれるわけもない。
これは自業自得だな。弟に借金もしてるし、離婚もしたしな。社会的な信用がほとんどないよな。
そこで米国に渡り、弟と話をすることにした。できるだけ早い便で飛行機を押さえ、米国・ロサンジェルスへ飛んだ。
「兄ちゃん、どうしたん。急にロスまで来て。仕事は?」
LAXに着くなり、迎えに来てくれた弟は矢継ぎ早に質問してきた。
「うん。急にごめんな。順を追って説明したいから、とりあえずどっか落ち着けるとこに行こう。」
いろいろ聞きたいことがあるだろうけど、いきなり公衆の面前で話なす話でもない。
今までのわだかまりも解いておかないといけないからな。
弟はLA郊外にある弟のオフィスに連れて行ってくれた。
「それにしてもなんも持ってきてないんやな。」
俺は印籠スマホに荷物を全部入れてたから、手元には財布とパスポートぐらいしか持ってない。
「それについても順に話すわ。」
オフィスでソファを進められ、さっそく今まで食えない間、援助してくれていた弟に、とりあえず現金(米ドル)で借金を返済。合わせて事業拡大のための資金を提供これで500万ドル。
「この金は一体……。まさか兄貴なんか犯罪起こして日本おられへんようになったんとちゃうやろな。」と、弟がテーブルに置いた現金に目を見開き、俺を睨みつけた。
「う~ん。犯罪ではない。かなり合法的な手段で手に入れたんだけど、その所々で違法なこともやっちゃってるかもしれない。」
「どういうことや。汚い金は受け取らヘンで。まさか兄貴、昔のやくざな連中とつるんで…。」
「いやいや、そういうこっちゃないねん。どこから話したらええやろ…。とりあえず俺と一緒に今から京都に飛んでくれへんか。」
「京都?今からってチケットも取れてへんのに、来たばっかりでとんぼ返りかいな。」
「いや、そういうことじゃなくて…。まあ、あとでまとめて話すからいっぺん京都へ飛ぶで。」
「だからどういうことか説明…」
いまだ状況が分からないうちに弟を連れて、京都・三条の会社の社長室に転移した。
弟は急に周りが変化したのに驚いて、しばらくポカーンとしていた。
「ここは京都三条の俺のオフィスやねん。もっともここでは『根岸波瑠』ではなく、『鴨川京介』という偽名で通してるけどな。…もっともその偽名も偽名じゃなくなってるというか…。」
「どういうことやねん。全然わからんわ。ここほんまに京都か?今まで俺のオフィスにおったのに…。」
「う~ん。とりあえず外出て見よか。心配せんでもちゃんとロスには戻るからあと30分ほど俺に時間ちょうだい。」
混乱しているだろう弟を連れて、三条通の龍馬受難の地石碑へ。そこから弟と一緒に異界へ渡る。
異界の地で、異界の存在を説明し、いまどのような状況で何をしているかを説明する。
極めつけはスマホの愛ちゃんと輝乃に擬人化してもらった。
口がひらっきっぱなしで呆然としている弟を連れて、弟のロスの家まで転移した。
万眼鏡が俺が見た風景をしっかり認識してくれているから、一度行ったところなら転移で戻ってくることができる。気軽に国境越えれるな。
転移でできることは、異界の中での移動、地球上での移動、異界から地球への帰還となっている。結界の作用から地球から異界への転移での移動だけはできない。
これがどうにかできれば楽なんだが。まあ、そのうち考えるか。
放心状態からようやく回復した弟は、俺に向かってこういった。
「う~ん。理解した。ようわからんけど理解はした。納得は全然できへんけどな。」
俺がおばばに説明を受けた時と、よく似たリアクションだ。
「まあ、仕方あるまい。今まで一切あやかしと人とは接点を持たんかったからな。あの万世一系の一族以外はの。」と、猫又のおばばがスマホから飛び出て実体化した。
おばば。また進化してたのね。
「ここが米国か。ちょうどいい機会じゃから、大統領とやらに釘差しに行こうかの。」
「いやいやおばば。今日はやめとこう。また今度の機会にね。」
「この人が猫又のおばば?」
「お前が京介の弟か?なるほどの。さっきから万眼鏡を通して見ておったが京介と同じぐらい魔力があるな。お主も魂の適合者の一人というわけか。」
「え?そうなん?」
うん、これは俺も予想してたんだよね。だってあやかしの血を引くもの。つまりこの弟と京都に住む俺の妹は『魂の適合者』の資格保持者じゃないかって思ってた。
ロスに来て改めて弟を見た時、それは確信に変わって、いきなりで悪かったけど異界に連れて行ってみたんだ。万眼鏡をかけてたわけじゃないからアクティベーションや情報の流れ込みはなかったみたいだけど。濃い魔素に酔った様子もなければ、異界に弾かれる様子もなかったからね。
「そ、それじゃ俺も兄貴みたいに、魔法が使えるようになるっちゅうことか?」
「そういうことになるな。まあ、おいおいと教えるよ。ところでここまで話したことが、まず初めの現状把握なんだ。これから話すことが今回渡米してきた目的とお前への協力依頼なんや。」
俺は弟とその後、ヤマトでの復興計画とこれからのことを話し合った。
最終的にはヤマトの人たちに、農業の技術指導というところまで行う必要が出てくる。
この役割は眷属の方々にお願いしようと考えている。
眷属の人たちが学んで、それを異界に伝える。
こうしないと異界の人が地球に来るか、地球の人を異界に渡らせるかしないと、技術指導なんかできないからだ。その技術指導を弟の知り合いに任せられないかと考えた。アメリカ式の工場プラントでの人工栽培だ。弟はその手のノウハウを持っている。弟の知識があれば、短時間で食糧の自給率がアップするだろう。
愛ちゃんに頼んで今までのヤマト王国復興計画や、魔法の使い方や理論に関するレポートを弟に渡した。それを見ながらそれから数日、具体的な手法について討議した。
さて次は住居だ。




