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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第3章 世界を救う?冗談でしょ?
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53 王政国家と神の使い

 一通り、王女に今のヤマト王国の説明を受ける。


 う~ん。どうしようか。


 俺としてはこの国のいざこざなんてどうでもいいんだけどな。おばばからの要請もあるし…。でも今のままじゃ、いずれこの国はダメになってしまう。傀儡国の誕生だな。仕掛けてるのがどこかは、まだわからないけど。しばらく考えて『ビジネス』として割り切ることにした。だってこの国や異界に俺はまだ情がわくほど思い入れはないからね。


 人の施しは有限で、厳しいものだとこの二人には理解してもらおう。


 「話は分かりました。お話を聞くと、この国はすでに国として成立してないような状況のようですね。」


 ガタっと王子が立ち上がり、俺を悔しそうな顔で睨んでいる。手は腰の剣に伸びている。

 王女はそれを手で制し、続きをうながす。

 俺は王子を見ながら続けた。


 「魔物の襲来があったのに、国として対処せず、その住民は見殺しにし、援助も行わず、町を放棄した。この行いひとつ見ても誰がこの国にすがろうとするのですか?この国に住む自分を誇れるのですか?あなたたちは税をとるだけ取って、何の保護もしない。これは国としてすでに崩壊しているといっても過言ではないと思うのですが、なぜ王子はいきり立っているのですか?」


 「お前に何がわかる。歴史あるこのヤマト王国を侮辱しおって…。成敗してやる。」


 王子は剣を抜き、俺に切りかかってくる。なかなかスピードも速い。しかし俺には当たらない。俺は剣の腹を少し打ち、剣筋をそらした。その上で顔面にこぶしを入れた。軽く入れたのだが王子の勢いがよすぎて派手なカウンターになってしまった。王子は座っていた椅子ごと後ろに放り出された。

 俺は立って王子の元まで歩き、髪をつかんで王子を立たせた。すでに剣はその手になく、顔面から鼻血を出していた。


 「確かにこんな馬鹿だと執政代行は無理でしょうな。まともに話もできないようだ。現実を受け止める頭もなく、過去の先祖の栄光を傘に着て、民からの信用を食いつぶすしかない。やれやれ。こんな情けない国、滅びた方が早いんだけどな。」


 「猫又のおばば様からの依頼でもあります、マスター」


 「そうなんだよな。それだけなんだよな。厄介なこと引き受けちゃったよ。愛、どうしようこれ。」


 俺は王子と王女を放ったらかしにして、愛と二人で話を進めた。

 つかみ上げた王子をもう一度椅子に座りなおさせる。


 「俺たちはある人(?)の依頼でこの世界に来た。この世界から見ると異世界ともいうべきかな。俺たちはこっちの世界を『異界』と呼んでいる。向こうの世界での国は日本だ。」


 王女が何か言いだそうとしているが、手を出して遮った。いちいち聞いてたら切りがない。まずこっちの趣旨をはっきりしてから、向こうの話を聞こう。


 「その世界で俺たちは暮している。そこに住んでるあやかし・・・つまり魔物が知恵をつけて力を増したものが、この世界とあちらの世界の境界を維持し、長い間世界の管理者として境界の修復を行ってきた。偶々俺はそのあやかしたちに見いだされ、依頼を受けこの世界にやってきた。目的はこの世界の結界の永劫的な封鎖とヤマト王国の再建だ。ヤマト王国のことはあやかしから聞いていたが…。まさかここまでひどい国だとは思わなかった。ああ、向こうの世界でもあやかしが普通にいるなんてことはなく、あやかしたちは人間と隠れて共存している。ここまではいいか?」


 王女は俺のことを恐れながらも、いくつか質問してきた。目の前で王子ぶん殴って鼻血出してるもんな。怖がるのも無理ないか。


 「それではあなた様はこのヤマトの国を侵略しにこちらに来たのですか。」


 「いや、そうじゃない。俺が頼まれたのはこの国への援助だ。しかし、今のまま援助したところで焼け石に水のようだし、どうしようかと迷ってる。勘違いしないようにしてほしいが、あやかしたちが気にかけているのは、このヤマトの国じゃない。このヤマトの国がある俺たちの世界で俺たちが住む『京都』って町の不安を取り除くためだ。早い話、あまりにもひどい状況を見てお前ら全員殺しちまって更地にし、そこで結界張った方が早いんじゃないかと思ってる。」


 「な、なんですと。…皆殺しですか。…あなた様の力があればそれも可能なんでしょうね。私も何度もこの役目を放り投げたいと思いました。しかしこの国には今まで暮らしてきた民がおります。せめてその者たちだけは救ってやってもらえないでしょうか。私たちは王族としてその責任を取り、処分を受け入れます。私たちに変わって、この国を継いでいただけるのならそれでもかまいません。どうか民だけはお見逃しください。」


 「う~ん。なんか勘違いしてるようだからもう一度言うね。俺たちがほしいのはこの土地の安定(・・・・・)だけだ。そのための手段として、皆殺しを選択したら、この土地に住む者は全員殺す。もっともそれだと、この土地にも『怨』がたまるだろうから、あまりその手も取りたくないと思っている。

 俺にとってこの国はしょせんその程度でしかない。この国をどうにかするのはお前たち王族の役目だろう。さっき責任を取って処分されるなんて言ってたけど、それは責任を取るっていうんじゃなくて『責任放棄』っていうんだ。この土地の安定のためには、お前たちがよい国を作って安定させればいい。それが王ってもんじゃないのか?」


 俺は王子を見ながら淡々と話をした。


 さてどうするか。こいつらに任せても今のままだと終わりが見えてる。かといって皆殺しの選択も取りたくない。援助をするにしても、俺の金がどこまで持つやら。向こうの世界の経済破綻を招きかねないからな。一国の立て直しの資金調達、物資調達を一企業がやろうとしてるんだからな。やっぱりほかに方法がないか。問題はこの国だけで済みそうにない気がするんだよな。下手したらこちらの日本全部を面倒見なきゃいけない羽目に陥るかも。あ~、どうしよう。


 「う~ん。考えてても切りないな。今から俺の言う条件を飲めるなら、俺がこの国を立て直す援助を続けよう。だめならその旨、シオンの街にも告げ、今シオンに施している援助も打ち切りとする。あと数か月もすればこの国はなくなるだろうから、それから改めてこの国に来て、やっぱり荒廃してだめなら討伐して平定した方が、俺たちの手間が省ける。」


 冷たいようだが、俺は最後通牒を突きつけることにした。


 俺はこのヤマトから見れば異界となる日本のことを説明する。


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