31 あやかしからの依頼
ひとしきりあやかしの長達の話が続いた。
俺はキツネっ娘の接待を受けてすでにデレデレ。
…酒がほしいな。
なんて考えだした頃、ようやく俺がのんびりしていることに気付くあやかしたち。
「いやぁ、京介様。そんなかわいいだなんて。」
「いやかわいいよ。こんな子が飲み屋にいたら通っちゃうのにな。」
「そんな、私なんて…。ぽッ」
………。
「コラー!京介!何をやっておる!」っと一喝。
おっと、おばば様に怒られちゃった。俺はまだニヤケながら周りを見渡すと…。
あやかしの皆様。そんなに私の顔を睨まないでほしい…。ただでさえ怖いんだから。
「すぐ若いおなごにデレデレしおって。おぬしのことでわしらみんなで話おうておるというに。少しはキリっと黙って待っておられんのか。」
キリッ。え、愛ちゃん、そんな目で見ないで。
「万眼鏡と印籠スマホ以外にもあと二つあるんだけどな。こっちも見てもらえるか?」
俺はボディバッグに入れていたノートパソコンとタブレットをキツネっ娘に渡し、おばばのもとにもっていかせた。
「な…なんじゃこれは。これも魔道具になっておるではないか。」
「おばば様。このような魔道具は見たこともないのですが、おばば様が、あ奴に渡されたので?」
「あ、そのノートパソコンとタブレットは端から俺の所有物だ。それを愛が勝手に魔力線でつなげて、いろいろ改造したらしく、魔力で動くようになっちまった。そのうえ、それぞれに擬似人格ができて、一人は人化も可能、もう一人はあと3日ってところかな。」
「な、なんじゃと?この二つも人化できるのか。人化してみよ。」
タブレットが光り、レティが生まれ、正座していた。
「お初に御目文字致します。タブレットのレティと申します。お見知りおきを。」
「おぅ。これもまた美人な変化じゃな。」
「京介の好みじゃろう。」
「なるほどな。」
…放っておいて。
「あとこっちの大きいのは?」
「さっき言っておったじゃろ。人化にはあと3日ほどかかると。じゃが、擬似人格はすでにおるようじゃな。どれ。」
ノートパソコンのディスプレイを持ち上げ開いた。
そこには黒髪3頭身の和服姿の女の子のイラストが、楚々として画面の左端から真ん中まで出てきた。
「輝乃と申します。よろしぅに。」
え、俺もまだ見たことないんだけど。ちょっと俺にも見せて。
う~ん、確かにタイプではある。3頭身だが。
「輝乃には今後株式売買及び世界情勢の情報収集を担当してもらう予定です。すでに株式市場予想ソフトは稼働しており、着々と利益を上げつつあります。」
え?そうなの?初耳なんだけど。もう儲けが出だしてるの?早くない?
あ、そうですか。すごく細かいお金の単位から始めるようにという指示を受けて、小さな値動きでの株を利益確定と同時に決済、その利益を次に転がし…と、すでに大きな雪だるまになってる。確かに24時間どこかの国のマーケットは空いているからな。人はそんなのをいちいち追いかけてられないけど輝乃ならそれができるらしい。どうやら俺が取得した『多重思考』のスキルも使っているようだ。
「この輝乃がいる限り、ご主人様には金銭での不自由はさせしまへん。」
頼もしいよ、輝乃。おじさんは感動している。…しかしこれって、立派なひもだな。
もうクズには戻りたくなかったのに…。
「ご主人様。ひもではございません。われら3姉妹は全てご主人様の思考、知識を共有することで生まれ出ております。ご主人様がやることをご主人様の代わりにやっているだけのこと。気ー使わんようお願いします。」
うん、輝乃ってちょっと大阪のあきんど入ってるよね。
それと俺の呼び方が愛は『マスター』、レティは『京介様』、輝乃は『ご主人様』ってなってるよね。
俺が始め言ってた『京介』って呼び捨てるのはどこ行った?
「あきらめておくれやす。この呼び方が一番しっくりきとるんやさかい。」
…うん。なんかいろいろとあきらめたよ。
また俺を外して、あやかし連中で喧々諤々の討議を始めたぞ。
また俺は座布団座って茶でも飲んどくか…。
しばらくすると、結論が出たのか、あやかしたちはそれぞれの席に戻っていった。
愛と、レティはノートパソコンを抱え、俺の後ろに座った。
「京介よ。状況はよくわかった。魔道具の変質はわれらも初めてのことでな。今後それらを経過観察することとなった。今までも万眼鏡を通してお主の動きは把握しておったが、今後も見させてもらうぞ。」
おっと、やっぱり見てたのね。で、今後も俺のプライバシーは無しっと。わかったよ。なんか愛たちに深層心理まで暴かれた後だからね。かえって開き直ることができる。
「そのうえでじゃ、京介。お主に頼みたいことがある。」
「頼みたいこと?次元のほころびの修復のことか?」
「あれについては今後、わしらの眷属が引き続きおこなっていくのでお主の手を煩わせることもなかろう。今までもそれで対応しておったのじゃ、そのことについては気にする必要はない。」
「じゃあ俺に何を頼もうってんだ。」
「お主にしてほしいのは、わしらの悲願の達成じゃ。」
「悲願?」
「そうじゃ、今のこの世界と異界とを完全に分離し、永続的な安定化をしてほしいんじゃ。」
「それってどうやって?」
「事の起こりはすでにお主にも話しておるじゃろう。こちらの世界の魔素をあちらの世界に送って閉じ込めた。しかし、風船のふき口のようにその口がこの京都に残ってしもうた。これを完全な結界として閉じ、お互いの世界の干渉を防ぐのじゃ。」
「完全な結界って…。向こうの世界丸ごと?星ひとつってこと?」
「そうじゃ、異界の星ひとつ丸ごとを包む結界じゃ。」
「どうやって?」
「お主の知識を見ているうちに、一つひらめいたことがある。お主が大学時代に研究しておったあの構造物を結界で作り出して封印するのじゃ。」
「大学時代に研究してたって…。ひょっとして、フラードーム?」
「そう、それじゃ。あのドームの考え方は根本には正多角体があるじゃろ。あの正多角体…20面体じゃったか…あれで結界をつなぎ全体を封印するのじゃ。あれなら膨張にも圧縮にも耐えられるじゃろう。」




