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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第2章 驚くことが多すぎて、ちょっと放心してきます。
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24 さらに混乱は混乱を呼ぶ

 「ネットワークを介在しないパソコンなんかもあると思うんだけど。」


 「すでに魔力線についてはご存知だと思いますが、マスター。ネットワークでたどれるところまではネットを使い、そこからは魔力線を物理的につなげることにより情報収集を行っております。」


 …つまり、輝乃たちと同じようにしたってわけね。


 だめだ、このままでは愛に地球を乗っ取られる。


 「よしわかった。現時点をもってすべてのハッキングを終了しろ。これは命令だ。必要な情報で現在ネットを通じて取れるものだけに限定して情報収集を行ってくれ。分析するにはそれで十分だろう。それ以上は命令がない場合情報収集することを禁止する。さっきのリベンジプロジェクトも、人材ネットワークも現時点で十分情報は取れているだろうからそれで終了とする。今後、俺が『命じる』と宣言しない限り、行動を起こすな。まったく、気づいていなかったらどうなってたことやら。俺が『こんな世の中滅びればいいのに』ってつぶやいたら最終戦争が起こりかねない。」


 「その御命令なら開始から終了まで10時間35分で行えます。」


 「いやだめだぞ。絶対するなよ。怖え~よ。力があることはわかったから暴走するな。」


 「それって、『押すな、押すなよ』っていう芸人の『違うからな!』…はい、了解いたしました。」


 …なんでそこでシュンとした声出してんだよ。残念そうにするな、そこの3頭身キャラ。のの字書かんでいいから。まったく、芸が細かい。


 「さて、残りは会社設立のための登記作業か。書類見せてくれるか?」


 「はい、マスター。その前に私の擬人化の許可をいただきたいのですがよろしいでしょうか。」


 「あぁ。そのほうが作業がしやすいか。わかった。許可しよう。」


 「了解しました、マスター。」


 スマホの画面の3頭身キャラが敬礼してくる。いちいち芸が細かい。

 するとスマホが光りだし、その光が『人』を構成していく。

 光が収まった後、愛が立っていた。


 身長は俺より少し低いぐらいか。胸は大きいし、腰もくびれてる、なかなかいいスタイルだな…って。

 「服ぐらい着ろ!」と、手じかにあったノートで頭をはたいた。


 「いや~お約束かと思って。てへっ。」


 …あざとい。そういうキャラじゃなかっただろ?さっきまで真面目に、どちらかというと機械的なところがあったのに。そういえば会話をすればするほど『人』のような感じになって行ってたな。これも進化したってことか?


 「ご推察通りです。常に愛は進化しております。」


 うん。だから服着ろって言ってんだろ!そんなに胸張るな。目が釘づけになるだろ。

 作りもんだとは分かっていても男の(さが)なんだよ。こっち見てニンマリするな。

 しぶしぶ服を顕在化しだした。体の表面が光りだし、俺と同じようなジーンズにカッターシャツの姿となった。年の頃なら大学卒業したてってとこかな。


 「では、プリントアウトした書類を持ってまいります。少々お待ちください。」


 にっこり笑って、仕事部屋に向かい、プリンターから書類をとってきた。


 「はい、これが登録申請書類となります。一応目を通してください。」


 なになに。定款は…これか。営業品目のところは…。なんだこのボリュームは。


 「おい。こんなに営業品目並べる必要があるのか?」


 「はい、マスター。世界征服するためにはやはりこれぐら『却下だ。』い…。はい。」


 「日本で生きていける程度でいい。株式の売買と物品の販売。そうだな事務用品、生鮮食料、建築資材、情報機器…それぐらいでいい。」


 「それでは少なすぎます。せめて不動産売買と、宅地開発、農地開発なども入れていただかないと。」


 「う~ん。それぐらいならいいか。いいか。世界征服は無しだぞ。もし他にもまだそのための準備をしているものがあったらすぐに取りやめろ。」


 「は~い。」


 「返事は『はいっ』だ。」

 今度はお尻めがけてノートではたいた。


 …まったく、油断も隙もない。


 不意にスマホの着信音が鳴った。

 愛はスマホを胸ポケットから出し、俺に渡してきた。


 「猫又のおばば様からです。」


 スマホが分離できたのにも驚いたが、あやかしから電話があったことにも驚いた。いや、もう慣れよう。


 「はい、もしもし。」


 「おぉ、繋がったようじゃな。どうもそっちではいろいろ大変なことになってるようじゃな。」


 「確かにね。えらく疲れましたよ。これっておばあさんの差し金ですか。」


 「冤罪じゃ。わしはそんなことを意図してお(ぬし)に印籠を渡したのではない。すべてはお(ぬし)の資質のせいじゃ。」


 「俺の資質?」


 …ん?俺に一体何があるのだというのだろうか。

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