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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
プロローグ
1/79

01 いつものように

 3日がかりで仕上げた企画書を、最後には徹夜までして、クライアントにメールに添付して送っておいた。


 俺は俗に言う『イベント・プランナー』という職業だ。


 紆余曲折(うよきょくせつ)、いろんなことがあって現在一人で仕事している。


 イベントの世界ってのはかなりいい加減で、なおかつシビアな世界だ。

 企画を起こし、クライアントを説得(プレゼン)し、実施・運営に向けてヒト、モノを手配し、教育して準備し、当日を迎え、様々な喜怒哀楽を巻き起こしながら終了する。

 企画段階ではかなりアバウトなものが、実施運営ともなるとかなりシビアになってくる。

 予算管理、時間管理、人員管理…

 やらなきゃいけないことは山ほど出てくる。


 このアバウトなところってのがかなりの曲者で、おかしく怪しい奴らがうごめいている世界でもある。


 裏切られたことは数知れず。


 何度やめようかと思ったことか。

 それでも毎回俺の弱いところを突いてくる連中のおかげで、どっぷり首までつかる羽目になっている。


 浪花節(お涙ちょうだい)には弱いからな。


 エンドユーザーであるゲスト(お客様)の顔が浮かんじゃうと、つい引き受けてしまう。

 ここ数年、俺に依頼してくるクライアントである男も、御多分に漏れずいい加減で、いつも二進(ニッチ)三進(サッチ)もいかないところで俺に仕事を振ってくる。


 安請け合いし過ぎだ。


 まあ、だからこそこの余裕のない世の中で、イベントの仕事をとってくるんだろうけど。

 それもそろそろ限界だろうな。


 今朝送った企画書を最後に当分仕事は入っていない。

 今回書いた企画も通るかどうかもわからない。

 通ったところで、俺が運営まで出るかどうかはまだまだ先の話だ。


 大きく伸びをして椅子から立ち上がり、仮眠するためベッドに向かった。


 ベッドに寝転がり、大きくため息をついた。

 あぁ。背中が伸びて気持ちいい。

 やがてそのまま眠りについた。


 昼過ぎにお腹が空いて起きだした。

 もう13時だ。


 ユニットバスに入り、熱いお湯でシャワーを浴びた。


 そうだ。眼鏡を新しくしないとな。

 今朝までの徹夜で、目がかなり疲れていた。

 最近50を過ぎたこともあり、老眼も進んでいるのだろう。


 近視に乱視におまけに老眼。


 裸眼ではパソコンの文字も見れない。

 スマホなんかはもってのほかだ。

 仕事柄、屋外作業も多いことから、京都に本社がある会社のタフなスマホを使っている。色は赤だ。

 前に黒いスマホを使っていて、現場で落として探すのが大変だったから、それ以来派手な色のスマホを使うようになった。


 何はともあれ、眼鏡だ。

 目に合っていないと、肩こりがひどくなる。

 早急に買い換えないといけない。


 シャワーから上がり、ようやくリフレッシュして着替え、バイクのカギと財布とスマホを取り、革ジャンとハンティングをかぶって外に出た。俺の住んでいるところはマンションの6階で、一番北側の部屋だ。部屋の北向きの窓からは、京都タワーが小さく見える。遮るものが何もないからな。桂川のほとりで近くに競馬場がある。


 この街に暮らし始めてからもう10年が過ぎた。


 階段を降り、1階の階段のわきにあるバイクのシートを外した。

 数年前にネットオークションで買った国産のアメリカンバイク。250㏄だ。

 15万円ほどだったか。買ってから少しずつ直して現在はかなり調子がいい。

 バイクにまたがり、チョークを引きキーを始動位置にし、セルを回すとすぐにエンジンがかかった。


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