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今日から学校と仕事、始まります。①莞

バタフライを開発した人

作者: 孤独

「俺、最近気になった事がある」

「は?」


夏の暑さを吹っ飛ばしてくれる水泳の時間を終え、またクソ暑い教室に戻る最中の事であった。


「バタフライってめっちゃ疲れるじゃん」


相場竜彦あいばたつひこは、水泳はボチボチである。速くはないが、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの四つの水泳をちゃんとこなせる。

とはいえ、その中でもっとも苦手とするのはバタフライであった。


「そりゃあな、両腕を上げて、腰が上下に動くみたいなわけわかんねぇ泳ぎだ」


その疑問を聞かされた舟虎太郎ふねとらたろう。彼はバタフライができない。超疲れるし、わけわからない泳ぎだと感じている。


「バタフライってなんのために存在してるんだよ?そんなレベルだぜ」


水泳を習う上でバタフライという方法は最後に習うだろう。それほど習得がハードで体力の消耗が激しい。


「クロールが至高だ。簡単で速いからな」


バタフライができず、役立たずと認識している舟の反応は、水泳を楽しむ発想がないに等しいだろう。海に行ってバタフライって普通やるか?クロールと平泳ぎ、あと背泳ぎができればだいたいこなせるんだ。

しかし、相場はバタフライについて、ある可能性を見た。


「バタフライのあの動き、女子がしたらどう思う」

「あ?」

「スク水じゃあない。競泳用じゃあない。ビキニだとしてだ」

「……………」


その言葉に思考を巡らせる相場。

両腕上げます、ドルフィンキックとかで体が揺れます、紐はちゃんとしてても、その激しい動きで……


「ポロリ……か?」

「試さないか」


◇      ◇


「バタフライをして?……いやに決まってるでしょ」


まず、やってくれそうな人より、その可能性が高い人。つまりは胸の大きさ順にお願いをしてみる。夏休みはプールの開放があって、スクール水着以外の着用もOKとなる日がいくつかある。


「なんでだよ、御子柴。お前、水泳が得意だろ!」

「いやよ、せっかくの遊びをバタフライなんかで疲れた思い出にしたくないわ」


相場達の試みの意図はまったく読めなかったが、その日は浮き輪にでも乗って水の上で優雅に過ごしたかった御子柴。


「バタフライ?私はできないよ」

「あ、ごめん。川中さんって泳げなかったっけ」

「苦手でねぇー。水泳も宿題扱いだから大変だよ」


次にクラスの天使、川中さんに声を掛けてみたがバタフライができないという理由で断念。

他にも色々と声を掛けてから、嶋村にお願いしてみる。


「みんなに頼んでいる順番は、胸の大きさ順ですか?」

「うっ」

「なんか変な企みが感じるので遠慮します」


さすがに何人にも話しかけていては気付かれる。意図までは分からないにしても、その怪しいお願いをやろうとする女子はいなかった。徐々に候補が減っていき、


「坂倉くん、今度。泳ぎ方を教えて」

「お、おう。夏休みの時でいいよな」


最後に目を付けたのは凸凹リア厨。高校生なのに、小学低学年くらいの大きさの迎。そして、相場達の友達、坂倉であった。


「いけると思うか?」

「どんな水着で来ると思う?バタフライからのポロリ作戦には、胸のデカさとビキニのタイプによると思うんだが」


しかし、彼女なら間接的にやらせることができる。バタフライという泳ぎは、水着のポロリをするために生まれた泳ぎなのか?



◇      ◇


『迎のビキニ見たいって言えよ、お前だって見たいだろ?心配するなよ、御子柴達だってそーいう水着で来るんだから、良いからお前が頼め!』


坂倉を色気で誘惑すれば、迎も期待に応えようとビキニでやってきた。


『泳ぎって言ったらバタフライだろ。バタフライを教えろ。難しいから手足や顔まで色々と触り放題だしな。できない方がアドバイスの機会は多いぜ』


教える泳ぎもバタフライに統一。


そんなわけで坂倉が教えつつ、迎がバタフライをして、相場と舟が観察するという奇妙な関係で始まった夏休みの水泳授業。


「バ、バタフライ!?」

「できる?やっぱり止めるか?」

「……ううん!私、バタフライはできないから!教えて!」


ここで誤算があった。


「坂倉ってバタフライできたか?」

「運動神経が良い奴だからできるだろ。クロールは速いじゃん」


その疑問を本人よりも知っていた2人。マジでこんな展開になるとは思わず、坂倉は舟と相場の方へ助けを求める視線を送る。


『ホントにバタフライをやらせていいのか?』


その視線に送り返す。


『まずはお前が手本を見せるのが筋だ』

『下手でも良いからやってみろ。彼女の前だぜ』


そう促され、坂倉は


「俺が50m。バタフライでやるから。そんなに早くねぇけど」

「ホント!じゃあ、私。ここから見てるね!」

「お、おう」


50mもバタフライ持つか?あんまり練習した事ねぇ泳ぎなんだよな。なんでこんな泳ぎを迎ちゃんに教えなきゃならんのだ?分からん。


そう思いながら、壁キックをして向こうまで泳いでいく坂倉。背も高く、体格も良いため、豪快なバタフライの動きは様になっている。遅いけど。


「おー、いいんじゃね?」

「まぁまだ疲れてねぇし、50mくらいは余裕だろ。坂倉だし」


25m泳いで切り返し、正直。見守ってる人の事など気にせず、バタフライに集中している坂倉。超キツイ。この泳ぎ、遠目で見ると溺れている感じだ。なんとか前進してくれと、力を振り絞って進む。


「あ」

「おい!」


しかし、坂倉の泳ぎは真っ直ぐから徐々に右に傾き始めた。しっかりとしたレーンがないのも原因だった。そのまま進んでいき、


「え?」


ビート版を持ちながら、平泳ぎの足で進む川中さんが……それに気づかなかった坂倉はそのまま進んで



ドーーンッ


正面衝突。2人共、水中に沈む。


「うひゃあぁっ」


泳ぎが苦手な川中はパニックになって、坂倉もその声と彼女の手がぶつかって気付けて、抱えて引き上げるのであった。


「大丈夫!?川中さん!」

「ふぁっ……びっくりした……!?」


しかし、びっくりしたのには続きがあった。偶然な事に、坂倉の指に引っかかった川中の水着は取れ、あたかも坂倉が意図的に奪い取ったかのような光景に仕上がる。そのお姿をまさかノーリスクで見れると思わなかった舟と相場。


「きゃああああぁっ!」

「!いや、これは違う!ぐはぁっ!?」


川中に張り手をかまされ、水中に押し込んで水着を奪い取る川中。

なんでこんな事になるんだと。川中から泳いで逃げるも、


「坂倉くん!そんな人だったんですか!?」

「えっ!?今の偶然だから!たまたまだ!たぶん、バタフライの時、手に引っかかってな!!」

「そんな泳ぎを私に教える気だったんですか!?もういいです!私、上がりますから!」

「ちょ!?迎!今の偶然だから!許して!!」


一時的にリア厨にダメージも与えられた。


「バタフライってそーいう目的だったか」

「開発した奴の下心、やべぇな」


2人にとってはざまぁみろスカッシュの一日となって良い日となった。

あとで坂倉は迎と川中にケーキを奢って、許されましたとさ。


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