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She can not die?  作者: FRIDAY
3/18

03.め

 


  ●



 男は、今どき、いや恐らくはいつの時代においても悪目立ちする、はっきり言って奇天烈な格好をしていた。

 頭は両目と口のみに穴の空いた真っ黒い覆面を被り、真っ黒い革ツナギを着ていて、肩からこれまた真っ黒いボストンバッグを提げていた。

 典型的な強盗の出で立ちだ。銀行強盗といえばまず思い浮かべる格好である。街を歩けば間違いなく職務質問を受けることだろう。それを見て、思わず彼は笑い出しそうになった。おいおい、銀行強盗でもするのかよ、と。

 男に気を配る者はいない。誰もが男をちらりと見て、すぐに視線を逸らす。確かにあまり関わり合いになりたい格好ではない。彼は男との距離が遠かったために、特に遠慮もせず眺めていた。

 彼が見ている向こうで、男は入口に仁王立ちし、銀行内をぐるりと見回した。そして何か得心いったのか無言で一つ頷いて、ボストンバッグから無造作に何かを掴み出すと、まるで銃のような黒光りするものを天井へ向け、発砲した。

 発砲した。

 発砲したのだ。

 銃のようなもの、ではなく、どうやら本当に銃であるらしかった。

 空気が凍った。



  ●



 

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