02.戯
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手持ちの金が尽きかけていることに気付いた。
ついでに冷蔵庫を除くと、常駐している水や、お茶、その他諸々が切れたり切れかけたりしている。これは買いに行かねばなるまい。買いに行くには金がいる。
時計を見ると辛うじて終業時間に間に合う時刻だったので、金を下ろすために自転車で近所の銀行へ向かった。
ドアを抜けて入ると、中央銀行であるだけあってこの時間でも人はたくさんいた。ATMの前にもやや長い列ができている。正直並びたくはなかったが、生活費がないのはどうしようもない。明日改めて来るのも面倒だし、仕方なく彼はATMの順番待ちに並んだ。
帰りにスーパー寄らないとなあ、などとぼけっと待っていると、存外に順番はさくさく進んでくれた。残りは三人だ。が、今ATMを操作している中年女性がやけにもたもたしている。その前の青年の、三倍は掛かっていた。一つ前の男性はいらいらとつま先で床をタップしている。時間に間に合うだろうか、と彼は向こうに掛かっている時計の方を見やった。
時計の時刻はかなりきわどい時間をさしていた。
待っては、くれないだろうなあ、と若干の焦りを覚えつつ、ぼんやりと視線を彷徨わせる。
ところで、この銀行では建物の構造的に、ATMのある方から時計の方を見ると、自然と銀行の出入口が視界に入るようになっている。彼がそちらを見やったちょうどそのとき、その入口から男が一人入ってきた。
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