11.よ
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長々と、長々と。ぺらぺらぺらぺらと。
中身のない話を、延々と。
身振り手振りまで大仰に加えて。
しゃらりしゃらしゃらと腕の銀輪を鳴らしに鳴らして。
まるで熱に浮かされたかのように。
まるで全くつまらなそうに。
それなのに、彼女が一歩を踏み出すまで誰一人として何もせず、口も挟まなかったのは、どうやら彼女が本気でつらつら語っているらしいと思われたからであり。
そして同時に、舞台上で台詞を語るかのような白々しさも感じられたからであった。
まるで心底自分に酔っているかのような気味の悪ささえ、漂っていたからであった。
そして、彼女は一歩を踏み出す。
「というわけで、いつでもどうぞ。御免なさいね、そこの人質のお姉さん。ああ心が痛いわ。痛い痛い。ええそうですよこの痛みはしっかりと心の痛みですとも多分。お昼に食べたカツカレーサーロインステーキラーメン丼とはまるで関係なくってよきっと。ああ、ああ、ガラスのハートがはちきれそう。はちきれちゃったらどうしましょう。でも全く心配しないでいいわ。ちょうどそろそろ入れ換えどきだと思っていたの。スペアもしっかり抜かりなく念入りに調整済みです。だから何の憂いもないわ。一切一抹の迷いもないわ。あなたに対して? 大丈夫、ちゃんとあなたのお墓には手を合わせてあげますから。その上お花まで供えてあげる。ああ、私ったら何て心優しいのでしょう。慈悲と慈愛に満ち溢れてるわ。ちゃんとしっかり草葉の陰から感謝感激ナイアガラ、よろしくお願いしますよ。心尽くしのサ───ヴィス………もちろん、ここを出たときにあなたを覚えていればの話ですけどねえ」
つかつかと、自然体で。
一切のためらいなく。
全くの淀みなく。
少女の歩みに合わせて、女性職員を人質に取った男は怖れさえ浮かべながらそのまま後ろに下がっていく。
歩きながら、少女は実に楽しげにまだ喋る。
「そもそも、私に対して人質なんか取ってる暇があるなら私をとことこん殺し尽くしてみるべきではありませんか? 御覧の通り私の装備は『学生服・謎の銀の腕輪約二ダース・学生鞄(百科事典仕込)』で飛び道具なんてないんですから。あなた方の殺すべきは私だけでしょう? さっきまでは何かの間違いで、今度こそちゃんと死ぬかもしれませんよ?」
「じゃあそうしよう」
パァン、と。
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