月曜日:存在5
キャンプ用品店を出ると、さっきと変わらずに道路は渋滞していた。しかし、さっきとは違ってクラクションの嵐付きだった。
ぱあーぱあー
と、字でかけばのんきかもしれないが、切羽詰まったような、焦っているような音がする。そして実際そうなのだろう。
僕たちはそれらを無視して、彼の友人の家を目指す。
一体、どの辺にあるのだろうか。話的には遠くない。
殺人のことよりも、遠さが気になった。どれほど歩くだろうか?もし、遠かったらどうしよう。遠くても、街を出ることはない。だが、なぜだか勇気が必要に思えた。
たった一歩でも歩むには勇気が必要だから。
「…どうやって殺すの?」
気を紛らわすために質問する。
慶介は、僕より三歩ほど先を歩きながら答えた。
「刺すよ。刺す。でも、刺して殺さない。首つりだ。首をつらして殺す」
「……どうして?」
わかっている。
たった、これだけの関係しか持っていない僕でもそれはわかった。彼の友人が首をつって死んだから、それで殺すつもりなんだ。
きっと、痛み分けのつもりなんだと思う。
「首を吊った苦しみってどうだろうな」
答えにはなっていなかった。
だけど、それで十分のように思えた。彼の想いは、その一つに収束しようとしていたからかもしれない。そうじゃないかもしれない。だけど、僕と彼の間ではそれで十分だった。
親しくもなく、まったくの他人でもない僕らの間では、それだけで十分だ。
歩道橋を渡り、キャンプ用品店とはまったくの逆へと歩いていくと、小さな公園がある。僕と慶介がであった公園だ。その公園を通りこすと、左右に分かれた道があった。
慶介は、立ち止まりもせずに右へと曲がる。右に曲がった先にはアパートがある。赤いアパートだ。そのアパートを素通りして、なおも歩いた。
一体、どれほど歩いただろうと思った。
だけど、時間的にはそう歩いていないはずだ。
進んでいくと、立派な一軒家が建っていた。それを見て慶介は言った。
「ここだ」
「ここ…」
「殺す…、殺す…、」
「…怖い?」
そう聞くと慶介は笑った。
「怖くないやつなんているかよ、結局そうだ。俺はこんな時でも怖さを感じるし、止めたいとも思ってる。あんなに憎いのにな」
「……」
「所詮、俺の決意なんて────」
「──その程度?違うよ…違うよ!」
気づいた時には、大声をだしていた。まるで、ハトが豆鉄砲をくらったように目を丸くした慶介を余所に僕は続ける。
「違うよ!決意っていうのはそうじゃない!!実行に移さないっていうのは、こうじゃない!!」
「なに言ってん…」
「こうじゃないだ!!」
こうじゃないんだ。
こうじゃない。
これで、決意はその程度と言われたら僕はどうなる?どうなるんだ?こうであってはならない。それは僕が僕であることを否定しかねない。
やらなきゃいけない。
やらなきゃいけないんだ。
「行こう…、明かり、ついてるってことはいるんだ」
「おじさん、」
「車も止まってる。行くよ」
「……うん」
5で行って、6でやって、7でその後みたいになりそうです。はたして読んでいる人がいるのか謎なところです。
もし、質問したいことがあれば、感想にかいてくれると幸いです。感想のある方がもし居ましたら、月曜日が終わる予定の存在7に書いてくれると助かります。いなければ、笑い話ですね。まあ、面白いとおもって書いてるわけではないですから、いないのも不思議ではないです。