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月曜日:存在3

 「殺す…?」


 僕が聞き返すと少年は続けた。


 「うん、殺したいほど憎い奴がいるんだ。こんな状況じゃなきゃ中々殺せないよ」


 今度は、僕の返事を待たずに慶介は続けて言う。


 「…昼に初めて会った人に言う話でもないけど、俺は苛められてるんだ」

 「それが理由…?」

 「ああ。でも、他にも理由はあるよ」

 「聞いてもいいかい?」

 「おじさん変わってるね、殺すって言ってる人間に理由聞くって話聞く限りニートっぽいけど、実は人と話す感じの仕事してたんじゃない?……まあ、いいけどさ、友達が居たんだ」

 「うん」

 「そいつが自殺したんだ」


 

 慶介の話は、聞きなれたような話だった。最近じゃニュースにもよく上がっているような、いじめの話だ。

 慶介は、別に友達のいない僕のようなやつではなく、普通にいそうな普通のやつだったらしい。小中と友達は多かったし、高校に入学してからもそれは例外じゃなかった。

 

 彼の小学、中学では苛めなんて問題は起きない良い学校だったらしい。だから高校に上がってすぐに苛められている人間を見て少しショックを感じた。

 最初は漫画のような苛め方だった。水をかけられていたり教科書を捨てられていたり、いろいろだ。だけど、秋ごろになるとその苛め方も変わっていた。


 

 「無視されるようになってたんだ。そいつ、自殺したやつね」

 「無視…?よかったじゃん、苛められるより辛くないだろ」

 「嘘つけよ、おじさん。おじさん言ったろ、なんで生きてる意味ないんだよ、そこに居るだけだから自殺しようとしたんだろ?」

 「……」

 「俺さ…そいつが無視され始めて数日後ぐらいにクラスのやつに聞いたんだよ、なんで苛められてるかさ、結局そういうの知らなかったし」

 

 「そしたらさ、なんて答えたと思う?」

 

 「知らないんだとさ、だれも知らないんだ」

 

 「何で誰も知らないんだろうな?いじめが起こったってことは、誰かが最初に始めたんだ。始めたやつがいるんだよ」

 

 「でも、誰も知らないんだ」

 

 「ふざけてるだろ?なんで、そいつは苛められなきゃいけなかったんだ?そいつの親は、そいつが苛められるためにそいつを生んだんじゃないんだ!でも!そいつは!!苛められたんだ!!!」


 「俺だって、秋までさ!!次に、俺が苛められるんじゃないかって怖くて何もできなかったし、そいつが苛められてた理由なんかこれっぽっちも知らなかったよ!!」


 「でも、…でもさ、!おかしいってことは気づいてたんだ、知ってたんだ!だってそうだろう?一人苛められてるんだよ!!一人、一日が苦になってるやつがいるんだよ!!それを…それを、なんとも思わないやつが何人もいるんだよ!!おかしいに決まってるだろう!!!」


 「……だから、俺は考えた。それで、俺はそいつと友達になることにしたんだ」


 

 それは、彼の心からの叫びのように、静かな公園に響き渡った。

 叫びよりは絶叫に近かったかもしれない。

 正直な話、僕にはわからなかった。確かに彼の言う通り、それはおかしいことだと思う。だけど、彼がそこまでになる気持ちが僕にはわからない。

 だって、所詮は他人だろう?友達ができたことのない僕だからそう思えるかもしれないが、所詮は他人だ。それに、次の標的にされるっていう話だってよく聞くし、怖がるのは当然のことじゃないか。いや、怖がるんじゃない、自分を守ることだ、全然おかしくない。現に彼は、その友達と接してしまったせいで標的になってしまったのではないのか?

 


 

 「俺がそいつと友達になることで、普通に接することで、誰かが…誰かがおかしいことに気づいて、俺みたいにそいつに近付いてくれるんじゃないだろうか、って期待して…」


 「でも…それはダメだった。むしろ、逆だった。俺が近づいたことで、俺も無視されるようになった」


 「そいつは、俺が無視されたことによって罪悪感を抱いて…ある日突然学校に来なくなった」

 

 「今までは、どんな辛い苛めでも耐えて学校に来てたんだ。そいつは言ってた、親に心配をさせたくないから学校には行くし勉強もするんだって」


 「でも、俺が無視されたことによって、そいつは来なくなったんだ」


 「それは、俺のせいか?おじさん、それは俺のせいか?」


 「俺は、そいつのために…仲良くなったんだ。あのクラスの誰よりも、あいつのほうが価値のある存在だった。少なくとも俺はそう思ってた!だけど、それは余計なお世話だったんだ、だって俺と仲良くなって、俺も無視されたことによって、そいつは自殺したんだから!!」


 「殺したのは俺だ!!最初に苛めをした人間じゃない、結局俺が殺したんだ!!そいつを!助けようと思ったこの手で!殺したんだ!!!!!」


 

 

 「……だから、俺はそいつの復讐をするために俺を殺すことにした。それは先週の話。でもその前にやることができた」

 「やること…?」


 僕は聞き返す。これしか僕にはできないから。

 彼の気持ちに圧倒されてそれしかできなくなったのか、元からこれしかできないのか…答えは言うまでもなく後者だ。

 僕は何もできない人間だから。


 「先週、俺が無視される前に仲良かった友人からメールが来た。そいつはメールが来たことを内緒で一つ教えてくれたんだ、最初に苛めをした人間を」

 「誰も知らないんじゃなかったのか、」

 「そいつは怖くて学校じゃ言えなかったらしい。そいつ入学式の時みてたんだってさ、顔が暗いっていう理由でからかってた連中を。多分そいつが最初だ、証拠はない。だけど殺す」

 「それで、殺した後自分も死ぬの…?」

 「いや、殺す。俺は、俺の友達を殺した人間を皆殺す。この地球が終わる前に殺す」


 それは、どうしようもないほどの苦悩だった。

 僕の苦悩とは、比べものにならないほどの苦悩で、そして僕とは違って導き出したんだ、答えを。

 

 僕は、ブランコを降りて少年を見て言った。


 「僕も手伝うよ」

 「……?なんで?おじさんは関係ないだろ」


 そう、僕はまったく関係がない人間だ。だけど、


 「地球が終わるんだ、何かしたいからね。君も一人より二人のほうが作業しやすいだろ?」


 だけど、僕にも必要なんだ。

 慶介のような、回答が。

 自殺じゃない、逃げるじゃない選択が。

 きっと、慶介についていけばわかる。そう思わせてくれる何かがある。 

誰か読んでるといいなあ…。と少し思いますけど、まあいっかと次話を書いていく。多分、5あたりに終わるんですが…。(サブタイトルの月曜日を入れ忘れるぐらい一週間の設定を忘れてる


矛盾点を見つけたので編集しました。

ユニーク数が微妙にあるんで、少しうれしくなる今朝。ほかと比べると悲しくなるんですが、まあ良いと思いました。

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