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月曜日:存在1

ジャンルがわかりません。この小説には、残酷な描写が含まれる可能性がありますが、警告する程度の残酷描写になる予定はありません。

 誤字脱字は極力無いように努めますので、暖かく見守ってください。

 どうやら来週は地球が最後の日らしい。

 これは、99.99%最後の日という意味だ。100%でないのは、この世の中何があるかわからないかである。


 『来週の月曜日、人類は滅亡します。今接近している巨大隕石は来週の月曜日0時15分頃に衝突とのことです。それにより、各国では様々な暴動が起きている模様です。皆様も外出する際はくれぐれもご注意ください』


 と、アナウンサーがもくもくと話しているのを僕は見て、重いため息をついた。そのため息は、別に来週で地球が終わるからではない。

 自分話になってしまうが、僕は高卒で就職もできずに家で親の脛をかじっているどうしようもない人間だ。いわゆるニートというやつである。

 今年で25にもなる僕は、この24年間一度も彼女ができたこともないし友人と呼べる友人もできたことがないような寂しい人間だ。この頃は、夕飯時に親の顔を見るのが辛くひきこもりを始めたほどである。しかし、ひきこもりを始めて数日で僕は気づいたのだ。このようなことは、何の解決にもならないと。だから僕は死ぬことにした。その決心をしたのが昨日だ。近くのホームセンターで手頃な縄を、元気よく買いパソコンで自殺の名称を調べている時にそのニュースは流れた。

 自室で、さびしいからつけていたテレビ番組を中断して緊急速報として流れたのがいわゆる地球最後の日。

 昨日まではまだ、確信でなかったという。もしかしたら、途中の一般人が知らぬような星に衝突することで地球に当たらない可能性があったという。しかし今日、その可能性はなくなったのだ。その隕石は、人々の期待を裏切ってその星を何事もなく通過し、さらに地球に向かってきているという。

 そこで、僕が何についてため息をついていたのか説明すると…


 「今日自殺する予定だったけど、来週で地球が終わるなら自殺しなくてもいっかー」


 ホームセンターで買った自殺用具の無駄。それだけだ。

 もし、緊急速報が自殺用具を買う前であるなら僕は無駄遣いをしなかっただろうとため息をついていたのだ。

 別に、今日予定通り自殺をしてしまえばそれは無駄に終わらない。しかし、地球最後という歴史的…いや、歴史というものは後世に伝えるものであるから、人類が滅亡してしまっては有って無いようなものになってしまうのだが、その歴史的瞬間を見ないのは何だか損な気がしたのだ。

 

 そう、所詮僕はそんな人間。

 決心はしても実行しようとはしない、つまらない人間。

 ただの、怠け者…。


 「あああああああ!!もう、っ…どうするの…!!どうするの、ああああああ!どうするのよおおおお!!」


 下の階から怒鳴り声が聞こえてきた、母親の声であることは息子の僕が保障する。

 おそらく、さっきのニュースを見て発狂しているのであろう。生きようとしている人間ならば、正常な行為である。

 僕は、下の階から聞こえてくる怒鳴り声に耳を傾けた。


 「今から、逃げるわよ!!!」

 「逃げるってどこに!」


 父親だ。今日会社は休みではないはずだが、さすがに会社に行こうとは思わないか。


 「知らないわよ!!早く車だして!」

 「どこに逃げるっていうんだ!」

 

 その通り。巨大隕石はこうしている間にも着々と地球との距離を縮めている。そして、巨大隕石が地球に衝突したとき、人類はその衝撃により吹き飛ぶだろう。仮にその衝撃から耐えられ、自分に向かって吹き飛んでくるあらゆる障害物をよけたとしても、地球が耐えられずに砕けるのでどう頑張っても生きることはできないのだ。

 つまり、どこに逃げようとも無駄。

 父さん母さんには、悪いと思っている。こんなダメな息子になってしまって悪いと。できれば親孝行をしたいとも思っていたし、この築30年の家を建て替えたいとも思っていた。

 しかし、それはできなかった。そしてできなくなった。

 気づくと、瞳から涙が零れ落ちている。僕はそっとパーカーの袖でふき取り数日ぶりに部屋を出た。部屋を出て廊下を歩き、見慣れた階段をゆっくりと降りた。降りると、左に玄関がある。外は不気味に静まっているように思えたが、実はそうでもないのかもしれない。

 ゆっくりと右を向いて一階の廊下をまっすぐと直進すると、リビングに続く磨りガラスがはめられた扉がある。磨りガラスからは二人の人影が見えた。

 それを見て、扉を開けようと思ったが止めた。開ける資格がないと思った。このような日にこの扉を開けられるのは家族でなければいけないと思ったからだ。そして僕は…家族である資格はないのだから。

 足音を立てないようにゆっくりと引き返す。後ろからは相変わらず怒声が聞こえてくるが、僕の話題は一切ない。当たり前だけれど。

 

 「どうしようかな…」


 これからのことを考えてみた。

 地球が終わる日を見ようにも来週となっては、やることがなくて困る。七日間とは案外長い。

 ふと思った。

 地球が終わる日とは、地球が終わる直前を示している。しかし意外にもそうではないのかもしれない。地球最後の一週間という風に視点を変えてみれば今も体験していることになるのだ。

 だったら…。

 玄関に行き、履きなれた茶色の汚い靴を履いて僕は家を出た。

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